2018年9月18日火曜日

形容語図録

 次の1回は、いわゆる形容詞を中心とする形容動詞、副詞、連体詞などの和語の形容語、或いは修飾語のうち基本と思われる二拍語、三拍語などの短語をとりあげ、整理したものである。和語における形容語の全体像を把握し、同時に個々の語の意味するところを探る試みである。これは前にとりあげた動詞編に続くもので、次の名詞編をもって完結の予定である。

 和語の形容語は、ほとんどが名詞と動詞の援用であり、本来的な形容語は少ないと見られるが、もちろんもとの一拍語に返ることができたとしても、その品詞を問うことは難しい。和語では、「ゐぬ犬」がいることが第一義で、それが「おほきい」か「ちひさい」か「しろい」が「くろい」かは第二義であるのであろう。ただ「つよい」にしろ「よわい」にしろ、本来的な形容語と見られるものは、それ以上遡ることができないものが多い。

 形容語を整理すると言ったが、それは非常に難しく、ほんの便宜的、恣意的に並べて見たものに過ぎない。以下のリストは、また、和語について分からないことがいかに多いかということを示している。一例であるが、古語の「し」形容詞が現代語になって「い」語尾となる際にも、単に「し」が「い」と転じる場合と、「し」の後に「い」をとって「しい」となる場合があり、そうした解明も今後の課題である。

 なお、次のリストには〔ラ入〕なる見慣れない用語がしばしば現れる。これは和語が一拍語から次々に長語化する際に長語化要素として無意味なラ行語「ら/り/る/れ/ろ」のいずれかが付加されたものであることを示している。これは形容語に限らず和語全体に及ぶ特徴的な現象であり、別にまとめて論じるつもりであるが、ここでは典型的な例として、形容語のリストの中からいくつかとり出しておく。

あかし-あかるし明
かし-からし辛、かし-かるし軽
くし-くらし暗、くし-くるし苦、くし-くろし黒
しし-しるし著、しし-しろし白
つし-つらし辛、とし-とろし
ぬし-ぬるし温、のし-のろし慢
ひし-ひろし広、ふし-ふるし古
まし-まるし丸、もし-もろし脆
ゆし-ゆるし緩、yeし-yeらし偉
よし-よらし寄、よし-よろし宜
わし-わるし悪、wuし-wuれし嬉

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