2018年8月27日月曜日

動詞図(9)わ行動詞

--------------------<わわわ>
わ(分)-わく(分く)=わわく(わ分く)〔「分く」を強調するか〕
           -わかす(別かす)
           -わかつ(分かつ)-わかたる-わかたれる
           -わかる(別かる)-わかれる
           -わきつ(分きつ)-わきたむ
           -わきむ(分きむ)-わきまふ-わきまへる
           -わける(分ける)-わけらる-わけられる
さ(分)-さく(裂く)-さかす(裂かす)-さかせる(w-s相通形)
           -さかつ(裂かつ)-さかたる〔屠つ〕
           -さかる(裂かる)-さかれる
           -さくむ(万210/971/4465)
           -さくる〔地面をくり抜いて水を流す〕
           -さける(裂ける)
あ(開)-あく(開く)-あかす(開かす)(w-&相通形)
           -あかつ(開かつ)-あかたる-あかたれる「あかちだ班田」
           -あかる(開かる)「行きあかる、罷りあかる」
           -あける(開ける)-あけらる-あけられる
わ(割)-わる(割る)=わわる(わ割る)「わわらばに」
           -わらす(割らす)-わらせる
           -わらふ(笑らふ)-わらはす-わらはせる-わらはせらる-わらはせられる
                    -わらはる-わらはれる
                    -わらる(割らる)-わられる
           -われる(割れる)
あ(離)-ある(離る)-あらく(離らく)-あらける(w-&相通形)
           -あらつ(離らつ)
ゐ(齗)-ゐる(齗る)〔歯に穴が開く(歯が痛む)〕
wu(穿)-wuく(齲く)〔歯に穴が開く(歯が痛む)、「うし齲歯」は漢語〕
    -wuく(穿く)「wuかみ窺見(斥候)、wuかがふ窺、wuかねらふ窺狙、wuけくつ穿沓」
    -wuぐ(穿ぐ)-wuがつ(穿がつ)-wuがたる-wuがたれる
           -wuぐふ(墳ぐふ)〔できものがただれる〕
ゑ(彫)-ゑぐ(刔ぐ)-ゑぐる(刔ぐる)-ゑぐらる-ゑぐられる(「くる刳」のヱ接語もある)「ゑぐし笑酒」
    -ゑつ(嘲つ)-ゑつる「ゑつらかす」
    -ゑふ(酔ふ)「ゑひさまたる/ゑひさまたごる」
    -ゑむ(笑む)-ゑまふ(笑まふ)「ゑみさかゆ、ゑまはし」
    -ゑる(嘲る)-ゑらく(嘲らく)「ゑ啁*嘲-ゑる嘲ル」「ゑりきざむ」《ゑらゑら》
           -ゑらふ(嘲らふ)
    -ゑる(彫る)-ゑらく(彫らく)
を(折)-をる(折る)=ををる(を折る)「なをり波折;をの斧、をのと斧音、をのや斧箭」
           -をらす(折らす)-をらせる
           -をらる(折らる)-をられる
           -をれる(折れる)
     -をwu(折wu)-をゐる(折ゐる)

 「分裂、分割、離脱、破断、曲折」などを言うワ行渡り語。
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わ(湧)-わく(湧く)-わかす(湧かす)(沸く-沸かす)「わかし若、わさ/わせ早稲」
を( )-をつ(変若)〔若返る〕「をちみづ変水」「をとこ男、をとめ少女、をみな女」

 「わく」には「湧出する」と「沸騰する」の両意がある。本来は地から水や湯が「湧く」であって、1万6千年前、土器を利用するようになって、沸騰する湯にそれを転用したか。
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わ( )-わく(誘惑)-わかつ(誘惑つ)-わかつる〔だましてさそふ〕
を( )-をく(招く)-をこつ(誘惑つ)-をこつる
           -をかす(誘惑す)-をかさる-をかされる(犯す-犯さる)「かざをき風招」
    -をぶ(誘ぶ)-をびく(誘びく)
           -そびく(誘びく)(w-s相通形)

 「をく(招く)-をかす(犯す)」がしっくり来ないが、「をかす」は本来はもちろん「誘惑する」の意で、それが一歩先に行って、誘惑した結果「(女を)犯す」意を取り込んだと考えると納得できる。しかし不明と言うほかない。
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わ(輪)-わぐ(輪ぐ)-わがぬ(綰がぬ)-わがねる〔輪につくる〕
           -わぐぬ(綰ぐぬ)-わぐねる
           -わぐむ(綰ぐむ)
           -わぐる(綰ぐる)
           -わごむ(綰ごむ)
    -わぬ(輪ぬ)-わなく(経なく)〔首をくくる〕「わな罠、しぎわな鴫罠」
           -わたく(経たく)(n-t相通形)
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わ(坐)-わす(坐す)
ゐ(居)-ゐる(居る)「ゐあかす居明、ゐしづまる、ゐぬ居寝*率寝」
wu(居)-wuwu(植wu)-wuわる(植わる)「つきwu急居」
              -wuゑる(植ゑる)-wuゑらる-wuゑられる
す(据)-すwu(据wu) -すわる(座わる) -すわらす -すわらせる(w-s相通形)
              -すゑる(据ゑる) -すゑらる -すゑられる
ゑ( )-
を(居)-をる(居る)
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わ-わたく わなく わななく わなる わめく 《わなわな》
  さたく さなく さななく さなる さめく
  あたく あなく あななく あなる あめく 「あたき」
ゐ-ゐたく ゐなく ゐななく ゐなる ゐめく
wu-wuたく wuなく wuななく wuなる wuめく 「wuたき」
  すたく すなく すななく すなる すめく
ゑ-ゑたく ゑなく ゑななく ゑなる ゑめく
を-をたく をなく をののく をなる をめく

 これは長語化の図ではなく、人や動物の呻き声を表わすワ行渡り語(わ/ゐ/wu/ゑ/を)に通用の語尾を機械的につけたものである。辞書によってとり上げる語はさまざまである。
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わ(悪)-わつ(悪つ)-わつる(悪つる)-わつらふ-わつらはす-わつらはせる-わつらはせられる

「わし/あし悪」(w-&相通形)
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わ(失)-わす(忘す)-わする(忘する)-わすらる-わすられる
                    -わすれる-わすれらる-わすれられる
wu(失)-wuす(失す)-wuさる(失さる)
             -wuしぬ(失しぬ)-wuしなふ
             -wuする(失する)
                                  -wuせる(失せる)

タ接:たわする(タ忘る)
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わ(移)-わつ(渡つ)-わたす(渡たす)-わたさす-わたさせる
                    -わたさる-わたされる
                    -わたせる
           -わたる(渡たる)-わたらす-わたらせる「わたりせ渡瀬、わたりで渡代」
                    -わたらふ
                    -わたれる
wu(棄)-wuつ(棄つ)-wuつす(移つす)-wuつさす-wuつさせる「なげwuつ投棄*擲、wuとし(疎シ)」
                      -wuつさる-wuつされる
                      -wuつせる
           -wuつる(移つる) -wuつらす-wuつらせる(「移る、写る」は同じ、「ゆつる」の形も)
                      -wuつらる-wuつられる
                      -wuつれる
                      -wuつろふ
           -wuとぶ(疎とぶ)
           -wuとむ(疎とむ) -wuとまる-wuとまれる「wuとまし(疎まシ)」
す(失)-すつ(捨つ)-すたる(廃たる)  -すたれる(w-s相通形)「なげすつ投棄、すたへ」
           -すてる(捨てる)  -すてらる-すてられる
ゆ(失)-ゆつ(棄つ)-ゆつる(棄つる)(「wuつる」の方言的、或いは時代的な異形か)
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わ( )-わぶ(侘ぶ)- - - -「わびし侘」
さ( )-さぶ(寂ぶ)- - - -「さびし寂」〔錆ぶ?〕(w-s相通形)
--------------------<ゐゐゐ>
ゐ(動)-ゐご(動ご)  -ゐごく(動ごく) -ゐごかす-ゐごかさる《ゐごゐご》
wu(動)-wuご(動ご)-wuごく(動ごく)-wuごかす-wuごかさる《wuごwuご》
                             -wuごかせる
                      -wuごかる-wuごかれる
                      -wuごける
           -wuごぬ(動ごぬ) -wuごなふ-wuごなはる〔群がり集まる〕
を(動)-をご(動ご)-をごく(動ごく)「をごめく蠢」《をごをご》
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ゐ( )-ゐも(痘も)「ゐもかさ瘡」
wu( )-wuぐ(倦ぐ)-wuぐふ(墳ぐふ)〔出来物が崩れる〕
    -wuづ(疼づ)-wuづく(疼づく)
    -wuむ(膿む)「wuみ(膿)」
    -wuる(熟る)-wuれる(熟れる)

 出来ものが膿んで崩れることと果物が熟すことが同じ語で捉えられている。
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ゐ( )-ゐや(敬や)-ゐやふ(敬やふ)-ゐやはふ「ゐやゐやし(恭シ)」《ゐやゐや》
           -ゐやぶ(敬やぶ)「ゐやびまつる礼祭」
           -ゐやむ(敬やむ)-ゐやまふ
wu( )-wuや(礼や)-wuやぶ(礼やぶ)「wuやwuやし(恭シ)」《wuやwuや》
             -wuやむ(礼やむ)-wuやまふ
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ゐ(居)-ゐる(居る)
wu(居)-wuつ「つきwu急居、しりかたwuつ」
を(居)-をる(居る)
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ゐ(率)-ゐる(率る)「ゐぬ率宿*率寝、ゐゆく率去、ひきゐる引率」
wu(率)「ひきwu引率」
--------------------<wuwuwu>
wu(倦)-wuす(倦す)「wuさ(憂さ)」
     -wuず(倦ず)「wuざい、wuざったい、wuんざり」
     -wuむ(倦む)(膿む)
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wu(治)-wuす(治す)-wuさむ(治さむ)-wuさまる
を(治) -をす(治す)-をさふ(抑さふ)-をさへる「をさ長」
            -をさむ(治さむ)-をさまる
                     -をさめる-をさめらる-をさめられる
           -をしふ(教しふ)-をしはふ
                    -をしへる-をしへらる-をしへられる
           -をしゆ(教しゆ)-をしyeる
           -をそふ(教そふ)-をそはる
--
    -をす(食す)「をしもの;をすくに食国/くにおす国食;かりをす、きこしをす」

 二拍動詞「をす」は、”(首長として)治める、統治する”意である。「をすくに」は統治する国、その名詞形が「をさ長」で、「さとをさ里長」「たをさ田長」などと使われている。「をす」には尊敬語として、どうしたわけか、”飲む、食べる”の意があり「をしもの」は食物の意となる。時代別上代編は「wuす」の存在を示唆している。
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wu(頸)-wuな(頸な)-wuなぐ(嬰なぐ)-wuながす(促す)
                       -wuなげる
wu(畝)-wuね(畝ね)-wuなふ(畝なふ)《wuねwuね》
             -wuねる(畝ねる)
を(峯)-をね(尾根)
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wu( )-wuむ(績む)「をwuみ麻績」
を(麻) -をむ(織む)
     -をる(織る)-をらす(織らす)-をらせる-をらせらる-をらせられる
            -をらる(織らる)-をられる
            -をろす(織ろす)

 「織る」の前項は、「お」では意味をなさず、本来「を(苧*麻)」でなければならないであろう。
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wu(飢)-wuゆ(飢ゆ)  -wuやく(飢やく)-wuやかす
            -wuやす(飢やす)
              -wuyeる(飢yeる)
    -wuwu(飢wu)-wuゑる(飢ゑる)「wuゑこゆ(飢臥)」
ゑ(飢)-ゑる(飢る)「かつゑる」
    -ゑwu(飢wu)
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wu(心)-wuら(心情)-wuらく(心らく)-wuらかす《wuらwuら》
             -wuらぐ(楽らぐ)-wuらがす
                         -wuらがる-wuらがれる
            -wuらぬ(占らぬ)-wuらなふ
            -wuらふ(占らふ)-wuらはふ
                      -wuらふる
            -wuらぶ(寂らぶ)-wuらびる-wuらびれる
                      -wuらぶる-wuらぶれる
           -wuらむ(恨らむ) -wuらまる-wuらまれる
           -wuらゆ(羨らゆ)-wuらやむ
           -wuれふ(憂れふ)-wuれへる
ゑ(心)-ゑら(  )《ゑらゑら》
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wu(愚)-wuる(愚る)-wuるく(愚るく)-wuるける「うるけ、うるけぢ」
             -wuろく(愚ろく)
            (-wuろつ)    -wuろたふ-wuろたへる「wuろwuろ」
                       -wuろたゆ
を(愚)-をる(愚る)-をろく(愚ろく)「をろをろ」
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wu(植)-wuwu(植wu)-wuわる(植わる)
              -wuゑる(植ゑる)-wuゑらる-wuゑられる
す( )-すwu(据wu) -すわる(座わる)(w-s相通形)
              -すゑる(据ゑる)-すゑらる-すゑられる
--------------------<ゑゑゑ>
--------------------<ををを>
を( )-をす(鞣す)「をしかは韋*鞣革*柔皮、かはをし皮鞣」
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を( )-をづ(踊づ)-をづく(踊づく)
           -をどる(踊どる)「さをどる、たちをどる立踊」
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を(悴)-をふ(悴ふ)
    -をゆ(悴ゆ)  -をやす(悴やす)
    -をwu(悴wu)-をゐる(悴ゐる)
             -ををる
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を(終)-をふ(終ふ)-をはる(終はる)-をはらす-をはらせる
           -をへる(終へる)
           -をほす(終ほす)
           -をほふ(終ほふ)
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動詞図(8)や行動詞

--------------------<ややや>
や(彌)-
yi(斎)-yiつ(斎つ)「yiがき斎垣、yiくし斎串、yiくひ斎杙、yiつき斎槻」
    -yiふ(斎ふ)-yiはす(言はす)-yiはさる-yiはされる
                    -yiはせる-yiはせらる-yiはせられる
           -yiはふ(祝はふ)-yiははる-yiははれる「yiはひまつ忌待」
           -yiはる(言はる)-yiはれる
    -yiむ(斎む)-yiます(斎ます)-yiましむ-yiましめる
           -yiまふ(斎まふ)「yiまyiまし(忌々シ)」
           -yiまむ(斎まむ)
           -yiもふ(斎もふ)
    -yiゆ(癒ゆ)-yiやす(癒やす)-yiやさる-yiやされる
           -yiyeる(癒yeる)
    -yiる(言る)-yiらふ(答らふ)-yiらへる
ゆ(斎)-ゆふ(結ふ)-ゆはく(結はく)〔言ふ〕「ゆひ結、かみゆひ髪結」
           -ゆはす(結はす)-ゆはせる
           -ゆはふ(結はふ)-ゆははる-ゆははれる
                    -ふはへる-ゆはへらる-ゆはへられる
           -ゆはる(結はる)-ゆはれる
    -ゆむ(斎む)-ゆまふ(斎まふ)-ゆまはる
           -ゆまむ(斎まむ)
ye(善)-yeる(選る)-yeらふ(選らふ)「yeらし偉シ(選らシ)」
           -yeらぶ(選らぶ)-yeらばす-yeらばせる
                    -yeらばる-yeらばれる
よ(善)-よく(避く)-よきる(避きる)「よこ横、よきぢ/よきみち避道」
           -よける(避ける)(”善い”ものをとり分ける)「よこ横」
    -よる(選る)-よらす(選らす)-よらせる「よらし(選らシ)/よろし良*宜」
           -よろふ(選ろふ)「とりよろふ」

イ接:いゆ(癒ゆ)-いやす(癒やす)-いやさる-いやされる
         -いyeる(癒yeる)
ム接:むやふ舫(む+ゆふ結)
モ接:もやふ舫(も+ゆふ結)

 「yeる/よる選-yeらぶ」は、何を取ってもいいのではなく、「良いものをとり上げる、とり出す」意となる。それが「yeる/よる」の本意である。よくないものを選ぶ、いい加減なものを選ぶ、は意味をなさない。
 「yeる」と「よる」の間にまったく逆の意味の「よく(避く/除く)-よける」が入ってくるのは意味深長である。考えて見れば「yeる」「よる」も「よく」も同じことを言っているであろう。よいものを取り上げるのも、よいものを取り除くのも、それを例えば敵に渡さないという趣旨では同じことになるであろうからである。(nk)縁語の「のける退」と「のこす残」の関係とよく似ている。
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や( )-やく(焼く)-やかす(焼かす)-やかせる
           -やかる(焼かる)-やかれる
           -やける(焼ける)
    -やす(痩す)-やせる(痩せる)(「やさかむ〔瘦せ衰える〕」の形も)「やせところ磽地」
    -やつ(窶つ)-やつす(窶つす)
           -やつる(窶つす)-やつれる
    -やむ(病む)=ややむ(や病む)「やまし病シ、やみしし病猪、えやみ、さむやみ、わらはやみ童病」
           -やまふ(病まふ)
           -やもふ(病もふ)
ゆ( )-ゆむ(病む)-ゆまふ(病まふ)「ゆまひ/あたゆまひ急病」

ナ接:なやむ(悩やむ)-なやます-なやまさる-なやまされる「なやまし悩シ」
                -なやませる-なやませらる-なやませられる
   なゆむ(悩ゆむ)
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や( )-やす(休す)-やすむ(休すむ)-やすます-やすませる「やす安、やすし(安シ)」
                    -やすまる
                    -やすめる
                    -やすもふ
           -やする(休する)-やすらふ
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や( )-やす(唆す)

ア接:あやす(寝かす子をあやして亭主しかられる)
ソ接:そやす(褒め「そやす」)
ド接:どやす(類語に「どなる」がある)
ハ接:はやす(やんやと「はやす(囃す)」)

 これら四語からあれこれ言い立てる意の二拍動詞「やす」の存在を認める。
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     やは(柔は)-やはす(柔はす)
           -やはる(柔はる)-やはらぐ
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や( )-やぶ(破ぶ)-やぶく(破ぶく)-やぶかる-やぶかれる
                    -やぶける
           -やぶる(破ぶる)-やぶれる-〔止む?〕
    -やる(破る)
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や( )-やむ(止む)-やまふ(止まふ)
           -やまる(止まる)
           -やめす(止めす)-やめさす-やめさせる
           -やめる(止める)-やめらる-やめられる
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や(矢)-やる(矢る)-やらす(矢らす)-やらせる「やり槍、やるかやられるか」
           -やらふ(矢らふ)
           -やらる(矢らる)-やられる「やれこも破薦、やれま破間*壊」
yi(射) -yiく(射く)-yiくふ(射くふ)「yiくは的;まとyi的射、おひものyi追物射」
    -yiゆ(射ゆ)
    -yiる(射る)-yiらる(射らる)-yiられる
ゆ(弓)-ゆむ(弓む)「ゆみ弓」
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や( )-やる(遣る)-やらす(遣らす)-やらせる
           -やらふ(遣らふ)
           -やらる(遣らる)-やられる
yi(行)-yiく(行く)  -yiかす(行かす)-yiかせる
           -yiかる(行かる)-yiかれる
           -yiける(行ける)
    -yiぬ(去ぬ) -yiなす(去なす)-yiなせる
           -yiなる(去なる)-yiなれる
し(去)-しす(死す)
    -しぬ(死ぬ)-しなす(死なす)-しなせる(y-s相通形)
           -しなる(死なる)-しなれる
ゆ(行)-ゆく(行く)-ゆかす(行かす)-ゆかせる
           -ゆかる(行かる)-ゆかれる
           -ゆける(行ける)

オ接:おゆ(老ゆ)-おyiる(老いる)「おyi老、あひおyi相老」
         -およす(老よす)-およすぐ
--------------------yiyiyi
や(揺)-やる(揺る)「やららに」
ゆ(揺)-ゆく(揺く)-ゆかす(揺かす)「ゆき雪」
    -ゆぐ(揺ぐ)
    -ゆす(揺す)-ゆさふ(揺さふ)-ゆさはる《ゆさゆさ》
           -ゆさぶ(揺さぶ)-ゆさぶる-ゆさぶらる
           -ゆすぐ(揺すぐ)
           -ゆすぶ(揺すぶ)-ゆすぶる
           -ゆする(揺する)-ゆすらる-ゆすられる
    -ゆつ(揺つ)-ゆたふ(揺たふ)「タ接:たゆたふ」
    -ゆふ(揺ふ)
    -ゆぶ(揺ぶ)
    -ゆむ(揺む)
    -ゆる(揺る)-ゆらく(揺らく)-ゆらかす-ゆらかせる「ゆり百合、たまゆら玉響」「ゆるし緩シ」《ゆらゆら》
                      -ゆらぐ(揺らぐ)
           -ゆらす(揺らす)-ゆらさす-ゆらさせる
                    -ゆらさる-ゆらされる
                    -ゆらせる
           -ゆらゆ(揺らゆ)-ゆらyeる
           -ゆらる(揺らる)-ゆられる
           -ゆるく(揺るく)
           -ゆるぐ(揺るぐ)-ゆるがす-ゆるがせる「yiるがせ/ゆるがせ」
           -ゆるす(揺るす)-ゆるさる-ゆるされる〔許す〕
           -ゆるふ(揺るふ)-ゆるほす「ゆるほし縦シ」
                    -ゆるほふ
           -ゆるぶ(揺るぶ)
           -ゆるむ(揺るむ)-ゆるます-ゆるませる
                    -ゆるまる
                    -ゆるめる-ゆるめらる
           -ゆれる(揺れる)
よ(揺)-よく(揺く)
    -よぐ(揺ぐ)
    -よふ(揺ふ) 「いさよふ、ただよふ漂、もごよふ」
    -よぶ(揺ぶ)
    -よむ(揺む)=よよむ(揺よむ)〔よぼよぼになる〕
    -よる(揺る)-よろく(揺ろく)-よろける《よろよろ》「なゐよる田居揺」
           -よろふ(揺ろふ)-よろほふ
           -よろぶ(揺ろぶ)-よろぼふ(蹌踉)

ア接:あyiぶ(歩ぶ)
   あゆく(歩く)-あゆかす
   あゆぐ(歩ぐ)-あゆがす
   あゆぶ(歩ぶ)
   あゆむ(歩む)-あゆます-あゆませる
          -あゆまふ
   あよく(歩く)
   あよぶ(歩ぶ)
   あよむ(歩む)
オ接:およく(泳ぐ)
   およぐ(泳ぐ)-およがす-およがせる
          -およげる
   およぶ(及ぶ)-およばす
          -およぼす-およぼさる-およぼされる、
カ接:かゆふ(通ふ)
   かよふ(通ふ)-かよはす-かよはせる「きかよふ来通」
ク接:くゆる(薫る)-くゆらす-くゆらせる(「くゆらかす」の形も)
サ接:さゆる(揺る)-さゆるぐ
タ接:たゆふ(揺ふ)「たゆたに、たゆたふ、たゆらに/たよらに」
   たゆむ(弛む)「たゆし/たゆたし、たゆたふ、たゆたに、たゆらに/たよらに」「倦まずたゆまず」
   たよふ(揺ふ)
マ接:まゆふ(迷ふ)
   まよふ(迷ふ)-まよはす-まよはせる
   まよふ(紕ふ)「まよひく紕来、まよひまじる、たがひまよふ」
サ接:さまよふ(さ+ま+よふ)
モ接:もゆらに

 顕宗前紀に「たなそこも”やらら”に」とあるが、この「やらら」について時代別上代編は「手に巻ける玉も”ゆらら”に」(万3243)の「ゆらら」と同様の語で、音がさやかに鳴るさまをいうか、としている。おそらくその通りで、筆者も同意見である。ただ音だけでなく、ゆらゆらと揺れる様子を強調しているであろう。そうとすれば、上記の「ゆる」「よる」と並んで縁語の二拍動詞「やる(揺る)」が存在していることになる。
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yi(斎)-yiつ(斎つ)
    -yiふ(言ふ)-yiはす(言はす)-yiはせる-yiはせらる-yiはせられる
           -yiはる(言はる)-yiはれる
    -yiむ(斎む)-yiまふ(斎まふ)
    -yiる(言る)-yiらふ(応答ふ)〔「yiる」は伝わらなかった〕
--
ゆ(結)-ゆす(結す)-ゆすふ(結すふ)「まゆすひ真結m4427」
    -ゆふ(結ふ)-ゆはふ(結はふ)-ゆはへる-ゆはへらる-ゆはへられる「ゆひ結」
ye(結)-yeふ(結ふ)「かたye方結」「yeひ結」
--------------------<ゆゆゆ>
ゆ( )-ゆづ(譲づ)-ゆだぬ(委だぬ)-ゆだねる-ゆだねらる-ゆだねられる
           -ゆづる(譲づる)-ゆづらす-ゆづらせる-ゆづらせらる-ゆづらせられる
                    -ゆづらふ
                    -ゆづらる-ゆづられる
--------------------
ゆ(湯)-ゆづ(湯づ)-ゆだる(茹だる)(「うだる」の形も)
           -ゆでる(茹でる)-ゆでらる-ゆでられる
--------------------<yeyeye>
ye(縒)-yeる(縒る)
よ(縒)-よる(縒る)-よれる(縒れる)「よりいと撚糸」
--------------------<よよよ>
     よご(汚 )-よごす(汚ごす)-よごさる-よごされる「けがす、こがす、にごす」
           -よごる(汚ごる)-よごれる
--------------------
よ(寄)-よす(寄す)-よさす(寄さす)-よさせる
           -よさる(寄さる)
           -よする(寄する)
           -よせる(寄せる)-よせらる-よせられる
           -よそふ(装そふ)-よそはす-よそはせる-よそはせらる-よそはせられる「きよそふ着」
                    -よそはる-よそはれる
                    -よそほふ「よそひ装~よそほひ装、ふなよそひ舟装*艤装」
                    -よそほる
           -よそる(寄そる)-よそらる-よそられる「よそりつま寄妻」
    -よる(寄る)-よらす(寄らす)-よらせる
           -よらふ(寄らふ)
           -よらる(寄らる)-よられる
           -よろふ(鎧ろふ)-よろほふ「よろひ鎧-よろほひ鎧」

カ接:かよる頼(か+よる寄)
タ接:たよる頼(た+よる寄)「たより便」
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よ(呼)-よぶ(呼ぶ)-よばす(呼ばす)-よばせる
           -よばふ(呼ばふ)-よばはる「よばひ夜這」
           -よばる(呼ばる)-よばれる
    -よむ(読む)-よます(読ます)-よませる-よませらる-よませられる
           -よまふ(読まふ)
           -よまる(読まる)-よまれる

サ接:さよばふ「さよばひ」
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動詞図(7)ま行動詞

--------------------<ままま>
ま(婚)-まく(婚く)-まかる(婚かる)-まかれる「めまく婚*女覓」
    -まぐ(婚ぐ)-まぐふ(婚ぐふ)-まぐはふ
                    -まぐはる
み(身*実)
む(身)-むす(生す)
め( )-めづ(愛づ)-めでる(愛でる)〔女づ〕「めだし愛シ」
「め女*妻(めこ/めのこ女子)、めぐし、めす雌、女神、雌鳥、女奴」
も(母*妹)「も妹(イ接:いも)、も母(いろも)」

ウ接:うむ(生む)-うます(生ます)-うまさす-うまさせる
                  -うまさる-うまされる
                  -うませる-うませらる
         -うまふ(生まふ)-うまはす「うまはし(利)」
                  -うまはる
         -うまる(生まる)-うまれる
         -うむす(生むす)
         -うもす(生もす)

 雌性を言う語はマ行に集まっている。
--------------------
ま(丸)-まく(巻く)-まかす(巻かす)-まかせる-まかせらる(負かす)
           -まかる(巻かる)-まかれる
           -まくす(巻くす)「まくしかく捲掛」
           -まくる(捲くる)-まくれる(「めくる」はこれの異形か)
           -まける(巻ける)
    -まぐ(曲ぐ)-まがる(曲がる)
           -まげる(曲げる)-まげらる-まげられる「まげ髷*枉*曲」
    -まず(混ず)-まざる(混ざる)
           -まじふ(混じふ)-まじはる「あひまじふ相、ぬきまじふ貫、をりまじふ折」
                    -まじへる
           -まじる(混じる)-まじらふ「いりまじる入混」
                    -まじろふ
           -まぜる(混ぜる)-まぜらる-まぜられる
    -まつ(纏つ)-まつふ(纏つふ)-まつはす(体に巻きつける)
                    -まつはる
           -まつぶ(纏つぶ)-まつばる「かきまつぶ掻纏」
                    -まつべる
           -まつむ(纏つむ)
           -まとふ(纏とふ)-まとはす
                    -まとはる
           -まとぶ(纏とぶ)
           -まとむ(纏とむ)-まとまる
                    -まとめる-まとめらる-まとめられる
    -まふ(舞ふ)-まはく(舞はく)-まはかす「ふるまふ振舞」
           -まはす(舞はす)-まはさす-まはさせる
                    -まはさる-まはされる
           -まはふ(舞はふ)
           -まはる(廻はる)
    -まる(丸る)-まるむ(丸るむ)-まるまる「まり毬」「まるし丸シ」
                    -まるめる-まるめらる-まるめられる
           -まろく(丸ろく)-まろかす
                    -まろかる
           -まろぐ(丸ろぐ)-まろがす
           -まろぶ(丸ろぶ)-まろばす「こyiまろぶ、ふしまろぶ」(転ぶ)
           -まろむ(丸ろむ)
み(廻)-みる(廻る)「いそみ磯廻、うらみ浦廻、くにみ国廻」
び(廻)「いそび磯廻、wuねび畝傍、をかび岡廻」
む(群)-むる(群る)-むれる(群れる)「むら村、むれ群」
め(巡)-めぐ(巡ぐ)-めぐる(巡ぐる)-めぐらす-めぐらせる
                    -めぐらふ
も(廻)-もづ(  )-もどく(擬どく)
           -もどす(戻どす)
           -もどる(戻どる)

シ接:しまく(繞く)
タ接:たみ(た+み/び廻)「たび旅」
タ接:たむ(た+む廻)「かきたむ掻廻、こぎたむ漕廻」、イ接:いたむ

 「丸い」ものを言うマ行縁語群である。「むれる(群れる)、むらがる」は”丸くなる”が原意か。また「むら村」はもと円形か。
--------------------
ま(目)-まく(目く)-まくふ(目くふ)-まくはふ
                    -まくはる
    -まぐ(覓ぐ)-まぎる(覓ぎる)-まぎらす-まぎらせる「くにまぎ国覓」
                    -まぎらふ
                    -まぎれる
           -まぐふ(覓ぐふ)-まぐはふ
                    -まぐはる
み(見)-みす(見す)-みさす(見さす)-みさせる
           -みせる(見せる)
    -みゆ(見ゆ)-みyeる(見yeる)
    -みる(見る)-みらる(見らる)-みられる
む( )-
め(目)-めぐ(愛ぐ)-めぐす(愛ぐす)〔情交〕
    -めす(目す)-めさる(目さす)-めされる「め目」「めす召、きこしめす、しろしめす」
    -めづ(愛づ)-めづる(愛づる)「めづらし珍シ」
           -めでる(愛でる)「めでたし目出度シ」
    -めむ(目む)-めみす(目みす)(めみす睇)
も(目)-もる(守る)-もらふ(守らふ)〔「もる守」は”目視する、注目する”意か〕

シ接:しめす示(し+めす見)〔試みに見せる〕
タ接:ためす試(た+めす見)〔試みに見る〕
マ接:まみゆ見(ま+みゆ見)-まみyeる
--------------------
ま(設)-まく(任く)-まかす(設かす)-まかさる-まかされる「まきく罷来」
                    -まかせる(罷かす/負かす)
           -まかづ(任かづ)
           -まかぬ(賄かぬ)-まかなふ〔時代別:あらかじめはかりまつ〕
           -まかる(罷かる)「まかりづ罷出、まかりまをす罷申;まかりぢ罷道」
           -まくる(罷くる)「さしまくる」
           -まける(負ける)
    -まwu(参wu)-まわふ(参わふ)-まわへる「まゐたる参至〔まゐいたる?〕」
           -まゐづ(詣ゐづ)
           -まゐる(参ゐる)-まゐらる
           -まwuく(設wuく)-まwuける「まwuけのきみ東宮」
           -まwuす(申wuす)-まwuさる-まwuされる「いのりまwuす祈申、ささげまwuす捧申」
           -まwuづ(参wuづ)-まwuでる
           -まをす(申をす)「まをしあぐ申上」
--------------------
ま( )-まく(播く、蒔く)〔(種を)周囲に”丸く”播く意か〕「まきおほす播生;しきまき敷播*重播」
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ま( )-まぐ(紛ぐ)-まがふ(紛がふ)-まがはす「まが曲/禍、まがこと悪事、まがたま勾玉、まがつひ」
           -まがゆ(紛がゆ)-まがよふ
           -まぎゆ(紛ぎゆ)
           -まぎる(紛ぎる)-まぎらす-まぎらせる
                    -まぎらふ-まぎらはす-まぎらはせる「まぎらはし(紛らはシ)」
                    -まぎれる
           -まぐる(紛ぐる)「まぐれあたり」
           -まごふ(紛ごふ)
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ま( )-ます(増す)-まさる(増さる)(優る、勝る)
    -まぬ(増ぬ)「まねし(多シ)」
    -まる(漏る)(大小便ともに”排泄する”)「おまる」「ゆまり/ゆばり、ゆばりまる」
み( )-みつ(満つ)-みたす(満たす)-みたさる-みたされる
           -みちる(満ちる)
           -みつる(満つる)
も(盛)-もる(盛る)-もらす(盛らす)「もし茂シ」
           -もらる(盛らる)-もられる
    -もる(漏る)-もらす(漏らす)-もらさる-もらされる
           -もらふ(漏らふ)-もらはる
           -もれる(漏れる)
--
も(重)-もふ(思ふ)「かたもひ片思」
    -もる(守る)-もらす(守らす)
           -もらふ(守らふ)-もらはる-もらはれる(守らふ/貰らふ-貰らはる-貰らはれる)

ア接:あぶ(余ぶ)-あばく(余ばく)(浴ぶ)
         -あびす(浴びす)-あびせる-あびせらる-あびせられる
         -あびる(浴びる)
         -あぶく(余ぶく)
         -あぶす(余ぶす)-あぶさふ
         -あぶる(余ぶる)-あぶれる
   あむ(余む)-あます(余ます)
         -あまぬ(余まぬ)-あまねふ-あまねはす〔広く行き渡る、行き渡らせる〕
                       -あまねはる
         -あまる(余まる)-あまらす-あまらせる「あまりべ/あまるべ余部」
         -あみす(浴みす)
         -あむす(浴むす)
オ接:おも(重も)-おもす(重もす)
         -おもぬ(思もぬ)-おもねる(阿る/佞る)
         -おもふ(思もふ)-おもはす-おもはせる-おもはせらる-おもはせられる
                  -おもはふ(m962/4389)
                  -おもはる-おもはれる
                  -おもふる
                  -おもほす
                  -おもほふ
                  -おもほゆ
                  -おもほる
   おぶ(溺ぶ)-おぼす(思ぼす)
         -おぼふ(溺ぼす)-おぼほす
                  -おぼほゆ
                  -おぼほる
         -おぼゆ(覚ぼゆ)-おぼyeる-おぼyeらる-おぼyeられる
         -おぼる(溺ぼる)-おぼらす-おぼらせる
                  -おぼれる
コ接:こぼ(零ぼ)-こぼす(零ぼす)-こぼさす-こぼさせる
                  -こぼさる-こぼされる
         -こぼつ(零ぼつ)
         -こぼる(零ぼる)-こぼれる
マ接:まぶ(塗ぶ)-まぶす(塗ぶす)
         -まぶる(塗ぶる)-まぶれる
   まむ(塗む)-まみる(塗みる)-まみらす
                  -まみれる「汗まみれ、糞まみれ、泥まみれ、血まみれ」
         -まむす(塗むす)
         -まむる(塗むる)
         -まめす(塗めす)
         -まめる(塗める)

 入れ物に注いだ水が「ます(増す)」ことを言う壮大なマ行渡り語、縁語群である。増した末に容器に一杯になり、遂に溢れ出ることも含む。「もふ/おもふ(思ふ)」は「おもきをおく、おもしとする」が本意のようである。
 日国「まる」の語源説欄に「満の義。また、モル(漏)の転か〔名語記〕」の卓見が見える。
--------------------
ま(間)-まつ(待つ)-またす(待たす)-またせる-またせらる-またせられる
           -またふ(待たふ)
           -またる(待たる)-またれる
--------------------<みみみ>
--------------------<むむむ>
む(身)-むく(向く)-むかす(向かす)-むかせる「うつむく、そむく背向/叛」
           -むかふ(向かふ)-むかはす-むかはせる
                    -むかへる-むかへらる-むかへられる(迎へる)
           -むくふ(報くふ)-むくはる-むくはれる「むくひ報*酬」
                    -むくひる
           -むくゆ(報くゆ)-むくyiる「むくyi 報*酬」
           -むける(向ける)

ソ接:そむく(背向)-そむかる-そむかれる
          -そむける
タ接:たむく(手向)-たむかふ「たむけ手向/たむけくさ草」
          -たむける
ハ接:はむく(歯向)-はむかふ
--------------------
む( )-むく(剥く)-むかる(剥かる)-むかれる
           -むくる(剥くる)-むくれる
           -むける(剥ける)(平ける)
    -むぐ(剥ぐ)-むぐる(剥ぐる)
    -むす(毟す)-むしる(毟しる)
め( )-めぐ(壊ぐ)-めげる(壊げる)
も( )-もぐ(捥ぐ)-もがる(捥がる)-もがれる
           -もげる(捥げる)
    -もる(捥る)

 「むしる毟」については、「むす」を想定し、ここに置いておく。
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む(蒸)-むす(蒸す)-むせぶ(咽せぶ)
           -むせる(咽せる)
    -むる(蒸る)-むらぐ(蒸らぐ)-むらがす
                    -むらがる
           -むらす(蒸らす)-むらせる
           -むれる(蒸れる、群れる)
も(燃)-もす(燃す)
    -もゆ(燃す)-もやす(燃やす)-もやさる-もやされる「ぼや小火」
           -もゆる(燃ゆる)
           -もyeる(燃yeる)
           -もよふ(燃よふ)

ア接:あぶ(焙ぶ)-あぶす(焙ぶす)
         -あぶる(焙ぶる)-あぶらる-あぶられる「あぶら油/脂」
イ接:いぶ(焙ぶ)-いびる(焙びる)-いびらる-いびられる
         -いぶす(燻ぶす)-いぶさる-いぶされる「いぶせし(鬱悒シ)」
                  -いぶせむ「いぶせみ悒憤」
         -いぶる(燻ぶる)-いぶらる-いぶられる
ク接:くぶ(燻ぶ)-くばす(燻ばす)
         -くばる(燻ばる)
         -くぶす(燻ぶす)
         -くべる(燻べる)-くべらる-くべられる
クス接:くすぶ(燻すぶ)-くすぶる
            -くすべる
            -くすぼる
    くすむ(燻すむ)
    ふすぶ(燻すぶ)-ふすぶる「ふすべ燻」(k-h相通形)
            -ふすべる
            -ふすぼる
ケ接:けぶ(煙ぶ)-けぶす(煙ぶす)-けぶさる-けぶされる
         -けぶる(煙ぶる)-けぶらす-けぶらせる
         -けむる(煙むる)-けむらす-けむらせる「けむり煙」
ス接:すぶ(煤ぶ)
ト接:とぶ(灯ぶ)-とぼす(灯ぼす)-とぼさる-とぼされる
         -とぼる(灯ぼる)
   とむ(灯む)-ともす(灯もす)-ともさる-ともされる(b-m相通形)
         -ともる(灯もる)

 「むす/むる」と「もす/もゆ」が意味の上で縁語と言えるかどうか分からないが、敢て分離する理由も見当たらないので、ここでは縁語として並べておく。土器の出現以前は「むす」ことを知らなかったわけで、もしそれ以前の語とすると別の意味があったであろう。
--------------------
む( )-むつ(睦つ)-むつぶ(睦つぶ)
           -むつむ(睦つむ)「むつまし/むつまじ」
--------------------
む( )-むつ(憤つ)-むつく(憤つく)-むつかる「むつかし難シ」
                    -むつくる
                    -むつける
           -むづく(憤づく)-むづかる
--------------------<めめめ>
--------------------<ももも>
     もだ(黙だ)-もだす(黙だす)〔黙っている〕
           -もだふ(悶だふ)-もだへる
           -もだゆ(悶だゆ)-もだyeる〔口に出さず悩む〕
--------------------
も(身)-もつ(持つ)-もたぐ(擡たぐ)-もたげる
           -もたす(持たす)-もたせる-もたせらる-もたせられる
           -もたる(凭たる)-もたらす-もたらせる(齎す)
                    -もたらふ
                    -もたれる
           -もてる(持てる)
    -もる(持る)-もらふ(貰らふ)-もらはる-もらはれる

タ接:たもつ(保もつ)-たもたす-たもたせる
           -たもたる-たもたれる
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     もと(本 )-もとむ(求とむ)-もとまる
                    -もとめる-もとめらる-もとめられる
           -もとる(悖とる)(日国:「もどる」とも。「もどる(戻)」と同語源)
     もど(擬 )-もどく(擬どく)「もどき擬/牴牾」「もどかし」
           -もどす(戻どす)-もどさす-もどさせる
                    -もどさる-もどされる
           -もどる(戻どる)-もどらす-もどらせる
                    -もどれる

 「もと(本*元*下*基)」の動詞化か。
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も( )-もむ(揉む)-もみつ(黄葉つ)-もみたふ「もみち/もみぢ黄葉*紅葉、もみちば黄葉」
--------------------
も( )-もゆ(萌ゆ)-もやふ(萌やふ)
           -もyeる(萌yeる)
           -もよふ(萌よふ)-もよほす「雨もよひ、(便意を)もよほす」
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動詞図(6)は行動詞

--------------------<ははは>
(以下のハ行動詞群は、”物と物の間を広げる”という概念を共有していると見てひとつにまとめた。)
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は( )-はく(掃く)=ははく(掃はく)「はけ掃/刷毛、ははき(ほうき)箒」
           -はかす(捌かす)-はかせる
           -はかゆ(捌かゆ)
           -はかる(掃かる)-はかれる
           -はける(捌ける)
           -はこぶ(運こぶ)-はこばす-はこばせる
                    -はこばる-はこばれる
    -はぐ(剥ぐ)-はがす(剥がす)-はがさる-はがされる
              -はがつ(剥がつ)-はがたる-はがたれる「ひはがち樋剥*廃渠槽」
              -はがる(剥がる)-はがれる
              -はぐる(逸ぐる)-はぐらす(「はぐらかす」の形も)
                       -はぐれる
              -はげる(剥げる)「はげ禿」
は( )-はず(爆ず)-はじく(弾じく)-はじかる-はじかれる
                    -はじける
           -はじむ(始じむ)-はじまる
                    -はじめる
           -はずむ(弾ずむ)-はずます-はずませる
           -はぜる(爆ぜる)
    -はつ(果つ)-はたす(果たす)-はたさす-はたさせる「はた/はな端、はて果」
                    -はたさる-はたされる
                    -はたせる
           -はたつ(果たつ)
           -はつる(果つる)
           -はてる(果てる)
    -はつ(剥つ)-はつる(剥つる)
    -はづ(開づ)-はだく(開だく)-はだかる 「はだ露/肌、はだか裸、はだし裸足」
                    -はだくる
                    -はだける
           -はだつ(開だつ)
           -はぢく(外ぢく)-はぢかる-はぢかれる(”除外する”の意。「はじく弾」とは別)
           -はづす(外づす)-はづさる-はづされる
           -はづる(外づる)-はづれる
    -はづ(恥づ)-はぢす(恥ぢす)-はぢしむ「はぢ恥/辱」
                    -はぢしる-はぢしらふ
           -はぢむ(恥ぢむ)
           -はぢる(恥ぢる)-はぢらふ
           -はづる(恥づる)
    -はぬ(放ぬ)-はなす(放なす)-はなさる-はなされる
           -はなつ(放なつ)-はなたる-はなたれる「ひはなち樋放」
           -はなる(離なる)-はなれる「くもはなる雲離」
    -はぬ(撥ぬ)-はねる(撥ねる)-はねらる-はねられる(跳ぬ、撥ぬ、刎ぬ)
    -はふ(放ふ)-はふる(放ふる/屠ふる)
    -はぶ(葬ぶ)=ははぶ(葬ぶる)-ははぶる「ははぶる(はうぶる/ほうむる葬)」
           -はぶる(葬ぶる)
    -はぶ(放ぶ)=はばく(蔓延く)-はばかる「世にはばかる」
                    -はびこる「野にはびこる」
    -はむ(放む)=ははむ(放はむ)-ははむる「ははむる(ほうむる葬)」
           -はむる(葬むる)
    -はゆ(蝕ゆ)-はyeる(蝕yeる)「はye蝕(日蝕や月蝕の「蝕」)、はyeつく(皆既日蝕)」
    -はる(張る)-はらす(張らす)-はらさる-はらされる「はら原、はら腹」
                    -はらせる
           -はらふ(払らふ)-はらはる-はらはれる「はらへ祓、かむはらひはらふ」
           -はらる(散らる)-はららく-はららかす「くゑはららかす」
           -はるく(遥るく)-はるかす「みはるかす見遥」
           -はれる(晴れる)
    -はる(払る)-はらふ(払らふ)-はらはる-はらはれる「はらへ、おはらひ祓」
    -はる(墾る)「はるた墾田、にひばり新墾」
    -はwu(壊wu)「はゑ(破壊)」〔やぶりこわす〕

ア接:あばく暴(あ+はく掃/はぐ剥)
サ接:さばく捌(さ+はく掃)
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ひ(低)-ひく(引く)-ひかす(引かす)-ひかさる「ひきし/ひくし低シ、ひきやま低山」
                    -ひかせる
           -ひかふ(引かふ)-ひかへる(控かへる)
           -ひかゆ(引かゆ)-ひかyeる(控かyeる)
           -ひかる(引かる)-ひかれる(惹かれる)
           -ひける(引ける)
    -ひす(秘す)-ひすむ(潜すむ)
           -ひそむ(潜そむ)-ひそます-ひそませる「ひそひそ-ひっそり」「ひさめく(私語)」
                    -ひそまる
                    -ひそめる
    -ひむ(秘む)-ひめる(秘める)-ひめらる-ひめられる
    -ひぬ(鄙ぬ)-ひなぶ(鄙なぶ)「ひな鄙、ひなさかる鄙放」「ひね陳、ひねひねし」
           -ひねる(陳ねる)
    -ひら(平ら)-ひらく(開らく)-ひらかす-ひらかせる「おしひらく押開、ひきひらく引開」
                    -ひらかる-ひらかれる
                    -ひらける
    -ひる(放る)〔屁を放る〕
    -ひる(簸る)〔篩を振る〕
    -ひろ(広ろ)-ひろぐ(広ろぐ)-ひろがる「ひろし広シ」
                    -ひろげる-ひろげらる-ひろげられる
                    -ひろごる
           -ひろむ(広ろむ)-ひろまる「つぎひろむ、ひろめのぶ」
                    -ひろめる-ひろめらる-ひろめられる
           -ひろる(広ろる)
    -ひwu(聶wu)「ひゑ刀、あをひゑ青竹刀」
--
ふ( )-ふく(拭く)-ふかす(拭かす)-ふかせる
           -ふかる(拭かる)-ふかれる
ふ( )-ふく(深く)-ふかす(深かす)(深く/古く/更く/老く)「きふ(来経)」「ふかし深シ」
           -ふかむ(深かむ)-ふかまる
                    -ふかめる
           -ふくる(膨くる)-ふくらす-ふくらせる
                    -ふくれる
           -ふける(深ける)(更ける/耽ける/老ける)
    -ふつ(太つ)-ふとる(太とる)-ふとらす-ふとらせる「ふとし太シ」
    -ふる(古る)-ふるす(古るす)(経る)「ふるし古シ」
           -ふるぶ(古るぶ)-ふるびる
           -ふるむ(古るむ)

イ接:いふく(息吹)「いふき/いぶき」
ハ接:はぶく省(は+ふく拭)
--
へ( )-へく(吐く)
    -へぐ(剥ぐ)-へがす(剥がす)〔薄く削りとる、そぐ〕
           -へがる(剥がる)
    -へこ(凹こ)-へこむ(凹こむ)-へこます-へこませる
    -へす(減す)
    -へず(減ず)-へずる
    -へつ(削つ)-へつる(削つる)
    -へづ(隔づ)-へだす(隔だす)「へだし隔」
           -へだつ(隔だつ)-へだたす
                    -へだたる
                    -へだてる-へだてらる-へだてられる
    -へぬ(隔ぬ)-へなつ(隔なつ)-へなたる(d-n相通形)
           -へなる(隔なる)「きへなる来隔」(d-n相通形)
    -へる(減る)-へらす(減らす)-へらさす-へらさせる
                    -へらさる-へらされる
    -へる(経る)〔距離・時間〕

ア接:あへく/あへぐ(喘く)
--
ほ( )-ほく(誇く)-ほこる(誇こる)-ほころふ
                    -ほころぶ-ほころびる
    -ほく(放く)-ほかす(放かす)
    -ほぐ(解ぐ)-ほぐす(解ぐす)-ほぐさる-ほぐされる「ほぐかみ反故紙」
              -ほぐる(解ぐる)-ほぐらす
                       -ほぐれる
              -ほごす(解ごす)「ほご反故」
    -ほず(穿ず)-ほじる(「ほじくる」の形も)
           -ほぜる
    -ほつ(解つ)-ほつく(解つく)
           -ほつす(解つす)
           -ほつる(解つる)-ほつれる
           -ほとぶ(解とぶ)-ほとばす「ほとばしる/ほどはしる(迸る)」
                    -ほとびる
                    -ほとぼす(「ほとばかす」の形も)
    -ほづ(解づ)-ほだす(解だす)-ほださる-ほだされる
           -ほだつ(解だつ)-ほだてる
           -ほどく(解どく)-ほどかす-ほどかせる「ほどろ」
                    -ほどかる-ほどかれる
                    -ほどける
                    -ほどこす-ほどこさる(施す)
                    -ほどこる
    -ほふ(放ふ)-ほふる(屠ふる)
    -ほる(放る)
    -ほる(掘る)-ほらす(掘らす)-ほらせる
           -ほらる(掘らる)-ほられる

 和語ではハ行音は非常に特徴的で、物と物、事と事が互いに距離を取る、離す・離れるという事態、或いは情況を言う。そのような事態を「は/ひ/ふ/へ/ほ」のそれぞれとそれに続く二拍目の音によって細かく言い分けている。
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     はか(  )-はかる(計かる)-はからす-はからせる「かりばか刈計、おもんぱかる慮」
                    -はからふ
                    -はからる-はかられる
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は( )-はく(吐く)-はかす(吐かす)-はかせる
ふ( )-ふく(吹く)=ふぶく(吹雪く)「ふぶき吹雪」
           -ふかす(吹かす)-ふかせる
           -ふかる(吹かる)-ふかれる
           -ふくる(膨くる)-ふくらす-ふくらせる(膨れる)「ふくろ袋」
                    -ふくらむ-ふくらます-ふくらませる
                    -ふくれる
                    -ふくろぶ
    -ふゆ(吹ゆ)「ふye笛」
    -へく(吐く)

ア接:あはく(ア吐く)
   あふく(扇ふく)
   あふぐ(扇ふぐ)-あふがす
           -あふがる
   あふつ(煽ふつ)
   あふる(煽ふる)-あふらる-あふられる(煽る/呷る)
   あへく/あへぐ(喘ぐ)
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は( )-はく(佩く)-はかす(佩かす)-はかせる(履く*穿く)
           -はける(佩ける)
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は( )-はす(  )
ほ( )-ほつ(  )

コ接:こはす(壊はす)-こはさる/こはれる-こはされる
コ接:こほつ(壊ホつ)
   こぼつ(壊ぼつ)-こぼたる
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は( )-はす(馳す)-はさす(走さす)-はささく「はしこし捷シ」
           -はしる(走しる)-はしらす-はしらせる「はしりで/わしりで」
           -はする(走する)
           -はせる(走せる)(馳す-馳せる)
わ( )-わす(走す)-わしす(走しる)
           -わしる(走しる)「わしりで」(「はしる」の近世的異形という)

サ接:さばしる
タ接:たばしる
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は(生)-はふ(生ふ)-ははす(延はす)-ははさす「かたちはふ;はふくず葛、はふつた蔦」
    -はゆ(生ゆ)-はやす(生やす)-はやさす-はやさせる(映ゆ)「はやし林」「もちはやす」
                    -はやさる-はやされる
           -はやる(逸やる)(流行る)
           -はゆる(生ゆる)
           -はyeる(生yeる)(栄える、映える)
    -はる(生る)「はる春」
ふ(生)-ふく(生く)-ふかす(生かす)-ふかせる(「ふ生-ふく」は”芽吹く”の意。”(風が)吹く”とは別)
    -ふゆ(殖ゆ)-ふやす(殖やす)-ふやさす-ふやさせる
                    -ふやさる-ふやされる
                    -ふやせる
           -ふyeる(殖yeる)
ほ( )-ほふ(生ふ)「きほふ/きそふ、いきほふ、うるほふ、にほふ匂」
オ接:おふ(生ふ)-おはす
         -おはる(生はる)「おひしく生及、おひたつ生立、おひつぐ生継」
         -おふる(生ふる)
         -おへる(生へる)
         -おほす(生ほす)
   おゆ(生ゆ)-おやく(生やく)-おやかす
                  -おやける
         -おやす(生やす)
         -おyeる(生yeる)
--------------------
は( )-はふ(這ふ)-ははす(這はす)-ははせる「ちはふ霊這、はへなは延縄、はふむし這虫」
           -ははる(這はる)-ははれる
--------------------
ば( )-ばふ(奪ふ)〔「まふ舞」意か〕

ウ接:うばふ/むばふ奪
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は( )-はむ(嵌む)-はまる(嵌まる)
           -はめる(嵌める)-はめらる-はめられる

コ接:こばむ拒-こばまる-こばまれる
ハ接:はばむ阻-はばまる-はばまれる
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     はや(早 )-はやぶ(早やぶ)「はやし(早シ/速シ)」
           -はやむ(早やむ)-はやまる
                    -はやめる
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は( )-はゆ(吠ゆ)
ほ( )-ほゆ(吠ゆ)-ほやす(吠やす)
           -ほゆる(吠ゆる)
           -ほyeる(吠yeる)-ほyeらる-ほyeられる「ゐぬほye犬吠、とほぼye遠吠」

イ接:いはゆ/いばゆ(嘶ゆ)
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は( )-はゆ(映ゆ)-はyeる(映yeる)
--------------------
は( )-はる(張る)-はらす(張らす)-はらせる(腫る)「はら腹、はら原」
           -はらむ(孕らむ)-はらます-はらませる
           -はらる(張らる)-はられる
           -はれる(腫れる)
ひ( )-ひろ(広 )-ひろぐ(広ろぐ)-ひろがる
                    -ひろげる
                    -ひろごる
           -ひろむ(広ろむ)-ひろまる
                    -ひろめる
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は( )-はる(墾る)「はりた墾田、はりみち墾道」
--------------------
は( )-はる(撲る)-はらる(撲らる)-はられる「はりたふす撲倒」
--------------------<ひひひ>
ひ( )-ひく(弾く)=ひびく(響びく)-ひびかす-ひびかせる「ことひき琴弾、かきひく掻弾」
           -ひかす(弾かす)-ひかせる
           -ひかる(弾かる)-ひかれる
           -ひける(弾ける)
--------------------
ひ( )-ひく(碾く)-ひかす(碾かす)-ひかせる
           -ひかる(碾かる)-ひかれる
    -ひす(拉す)-ひさぐ(拉さぐ)-ひさげる(ひしゃぐ-ひしゃげる)
           -ひしぐ(拉しぐ)-ひしがる-ひしがれる
    -ひづ(拉づ)-ひだく(拉だく)「とりひだく」

 一拍語「ひ」は、稗や粟を臼で潰して粉にする意か。
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ひ(疼)-ひく(疼く)=ひひく(疼ひく)「ひりひりする(記神武)」《ひりひり》
    -ひる(疼る)=ひひる(疼ひる)-ひひらく〔ひりひり痛む〕
                    -ひひろぐ

 一拍語「ひ」は、和人の苦痛の悲鳴の模写語か。
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ひ( )-ひつ(漬つ)-ひたす(漬たす)-ひたさる-ひたされる《ひたひた》
           -ひたる(漬たる)
           -ひてる(漬てる)
    -ひづ(漬づ)-ひづつ(漬づつ)(万3969他)
           -ひづる(漬づる)
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ひ(秀)-ひづ(秀づ)=ひひづ(秀ひづ)-ひひでる
ほ(秀)「ほ(秀*帆*穂)」「ほろ秀、まほろば」

 「ほ穂」のように高く突き出た雄々しいものを言うハ行渡り語の一部と見られる。
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       (ひづ)-ひづむ(歪づむ)-ひづます(歪ます)-ひづませる「ひだ襞」
                    -ひづめる(歪める)
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ひ(氷)-ひゆ(冷ゆ)-ひやす(冷やす)-ひやさる-ひやされる「ふゆ冬」「ひやひや、ひyeびye」
           -ひyeる(冷yeる)
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     ひら(  )-        -ひらめく《ひらひら》
     ひろ(  )-        -ひろめく(稲光が光る)(虺く)
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     (ひ-ひる)-ひらふ(拾らふ)-ひらはる-ひらはれる「ひらひまつぶ拾集」
           -ひりふ(拾りふ)「沖つ白玉ひりひて」
           -ひろふ(拾ろふ)-ひろはす-ひろはせる
                    -ひろはる-ひろはれる

 「ひりふ」「ひろふ」は万葉集に用例があり「ひらふ」は新しい。不詳。
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ひ(火)-ひる(干る)
ふ(火)「あしふ葦火」
ほ(火)-ほす(干す)-ほさす(干さす)-ほさせる
           -ほさる(干さる)-ほされる
           -ほせる
    -ほつ(火つ)-ほてる(火てる)「おもほてる面熱」
           -ほとぶ(火とぶ)-ほとぼる「ほとぼり」
    -ほむ(火む)-ほめく

サ接:さぼす干
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ひ(簸)-ひる(簸る)「ひ簸」
    -ひる(冲る)=ひひる(冲ひる)(飄る)「ひひる蛾」
ふ(振)-ふく(振く)「はふく羽振」
    -ふゆ(振ゆ)「みたまのふゆ恩頼」
    -ふる(振る)-ふらす(振らす)-ふらせる「ふるひ篩、なゐふる地震、はるふ羽振」
           -ふらる(振らる)-ふられる
           -ふるふ(震るふ)-ふるはす-ふるはせる「ふるひ篩」
                    -ふるへる
           -ふれる(振れる)

 模写語《ひ-ひら-ひらひら》《ふ-ふら-ふらふら》などをもとにするか。
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ひ( )-ひる〔(屁を)放る〕
--------------------<ふふふ>
ふ( )-ふく(伏く)-ふくす(伏くす)-ふくする
    -ふす(伏す)-ふさす(伏さす)-ふさせる
           -ふせる(伏せる)
    -ふむ(踏む)-ふます(踏ます)-ふませる「ふみあだす、ふみおこす、ふみからす」
           -ふまる(踏まる)-ふまれる
    -ふる(降る)-ふらす(降らす)-ふらせる
           -ふらる(降らる)-ふられる
ほ( )-ほむ(践む)「ほむし践石*蹈石」

カ接:かぶす被-かぶさる/かぶせる

 力や動作が上から下へ及ぶ意か。
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ふ( )-ふく(葺く)「屋根を葺く」

 「ふく」は、雨や日射を防ぐために木組みの上部を覆うことで、上記の「ふ」動詞のひとつと考えられる。それは、別に扱ったオ接動詞「おく、おす、おつ、おる」などのひとつ「おふ(覆ふ)」の「ふ」でもあるであろう。
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       (ふす-)ふさふ(相応ふ)-ふさはす 「これは布佐波ず(記上)、ふさはし(相応シ)」

 フ接語か。「さ、す」は漢字”然”で表される意か。
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     ふた(蓋 )-ふたぐ(蓋たぐ)-ふたがる
           -ふさぐ(塞さぐ)-ふさがる(t-s相通形)
           -ふせぐ(防せぐ)
           -ほせく(防せく)

 「ふたぐ」「ふさぐ」を(t-s)相通語としたが無理のようである。
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            ふつく(   )-ふつくむ(憤/恚/怒)〔怒る〕(類「ふしこる」)
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     ふと(太 )-ふてる(太てる)「ふとし(太シ)、ふてぶてし」
           -ふとぶ(太とぶ)
           -ふとむ(太とむ)
           -ふとる(太とる)-ふとらす-ふとらせる

タ接:たふとぶ尊「たふとし尊(た+ふと太)」
マ接:まふとむマ太

 難語である。「ふ」は、おそらく「ふくる膨」の「ふ」と通用であろうが、そこまでである。
 日国「ふとい」の補注欄に『上代には、語幹「ふと」が「ふとしく」「ふとしる」「ふとのりと」など、神やそれに準ずるものに関する名詞や動詞に上接するところから、賛美の意が込められていたと考えられる』とある。
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ふ(綜)-ふる(綜る)(経糸を機にかける)
へ(綜)-へる(綜る)「へ綜〔織機の経糸掛け〕、へそ綜麻」
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ふ( )-ふる(触る)-ふらぶ(触らぶ)-ふらばふ(「ふらばふ触這*触経」?)記雄略
           -ふらる(触らる)
           -ふれる(触れる)-ふれらる-ふれられる
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ふ( )-ふる(狂る)-ふれる(狂れる)(「くる転」のk-h相通か)
--------------------<へへへ>
へ(圧)-へす(圧す)「おしあひへしあひ、へしをる折」
    -へる(謙る)「へりくだる、おしへる、おとしへる」

 一拍語「へ(凹/減/圧/謙/)」も、類似のハ行縁語とともに総括されるであろう。
--------------------<ほほほ>
ほ(秀)-ほく(寿く)=ほほく(婪ほく)-ほほける「ほきうた祝歌、かむほき神祝、ことほぎ言寿」
           -ほかす(寿かす)
           -ほかふ(寿かふ)「ほかひひと乞食者、さかほかひ酒楽」
           -ほける(寿ける)
           -ほこる(寿こる)-ほころふ(誇る)
    -ほぐ(寿ぐ)-ほがふ(寿がふ)「ことほぐ」
    -ほす(寿す)-ほさく(寿さく)「かむほさきほさきく」
           -ほせく(寿せく)
    -ほつ(寿つ)-ほたく(寿たく)「ほたきこと談咲」
    -ほむ(褒む)-ほまる(褒まる)「ほまれ誉」
           -ほめる(褒める)-ほめらる-ほめられる
--
ほ(惚)-ほく(惚く)=ほほく(惚ほく)-ほほける「やみほほく病耄」
    -ぼく(惚く)-ぼかす(惚かす)
           -ぼける(惚ける)
    -ほる(惚る)-ほれる(惚れる)-ほれらる-ほれられる(惚る*慌る*耄る)
--
ほ(欲)-ほす(欲す)「ほし(欲シ)、きほし着欲」
    -ほる(欲る)-ほりす(欲りす)「ほりし(欲りシ)」

オ接:おほく-おほける(婪く/嬰く)〔貪り食う〕
ト接:とぼく-とぼける
マ接:まほる(貪る)
   まぼる(貪る)
ムサ接:むさぼる(貪る)(むしゃむしゃ食べる)
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     ほろ(模写)-ほろぶ(滅ろぶ)-ほろびる《ほろほろ》
                    -ほろぼす-ほろぼさる-ほろぼされる
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動詞図(5)な行動詞

--------------------<ななな>
な(泣)-なく(泣く)-なかす(泣かす)-なかさる-なかされる(鳴く)
                    -なかせる-なかせらる-なかせられる
           -なかる(泣かる)-なかれる
           -なける(泣ける)
    -なす(音す)「うちなす打鳴、かきなす掻鳴、ふきなす吹鳴」
    -なる(鳴る)-ならす(鳴らす)
ぬ(鳴)-ぬる(鳴る)「ぬて/ぬりて鐸」
ね(鳴)-      -ねつく(哭つく)-ねつかふ〔葬送にあたって号泣する〕
の(告)-のる(告る)-のらす(告らす)「のり法*則、みのり御法、のりと祝詞;なのる名乗」「”の”たまふ」
           -のらふ(告らふ)
           -のらる(告らる)
           -のろふ(呪ろふ)-のろはる-のろはれる

サ接:さなく鐸
ネ接:ねなく
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な(無)-なく(無く)-なくす(無くす)-なくさす-なくさせる「なし無シ」「なくなる」
                    -なくさる-なくされる
    -なぐ(薙ぐ)「なぎなた薙刀」
    -なぐ(長ぐ)-ながす(流がす)-ながさふ
                    -ながさる-ながされる「ながし長シ」
           -ながる(流がる)-ながらふ-ながらへる「(たたき)まながる」
                    -ながれる
           -なぎる(流ぎる)(ミ接:みなぎる-みなぎらふ))
           -なぐる(殴ぐる)-なぐらす-なぐらせる
                    -なぐらる-なぐられる
           -なげく(嘆げく)-なげかす-なげかせる
                    -なげかふ 「なげかはし」
                    -なげかる-なげかれる
           -なげる(投げる)-なげらる-なげられる
    -なす(無す)
    -なぶ(無ぶ)-なばる(匿ばる)「なばり隠*名張、よなばり吉隠」
    -なむ(無む)-なまる(匿まる)
に( )-にぐ(逃ぐ)-にがす(逃がす)
           -にげる(逃げる)-にげらる-にげられる
ぬ( )-ぬく(抜く)-ぬかす(抜かす)-ぬかさる-ぬかされる「ふみぬく踏抜、もぬけ蛻」
                    -ぬかせる-ぬかせらる
           -ぬかる(抜かる)-ぬかれる
           -ぬける(抜ける)「底が抜ける」
    -ぬぐ(脱ぐ)-ぬがす(脱がす)-ぬがさす-ぬがさせる「ぬぎwuつ(脱棄)」
                    -ぬがさる-ぬがされる
           -ぬがぬ(脱がぬ)-ぬがなふ
           -ぬがる(脱がる)
           -ぬぐふ(拭ぐふ)-ぬぐはす「てぬぐひ手巾」
                    -ぬぐはる-ぬぐはれる
           -ぬげる(脱げる)
の( )-のく(退く)-のかす(退かす)-のかせる-のかせらる
           -のかふ(退かふ)
           -のける(退ける)-のけらる-のけられる
           -のこす(残こす)-のこさす-のこさせる
                    -のこさる-のこされる
           -のこる(残こる)
    -のぐ(逃ぐ)-のがす(逃がす)
           -のがぬ(逃がぬ)-のがなふ
           -のがる(逃がる)-のがれる(のがなふ)
           -のごふ(拭ごふ)-のごはす-のごはせる「かいのごひ掻拭、たのごひ手巾」
                    -のごはる-のごはれる
ど( )-どく(退く)-どかす(退かす)-どかせる(n-d相通形)
           -どける(退ける)

イ接:いな(否)
   いなす(い無す)-いなさる-いなされる〔無いものとする〕
   いなぶ/いなむ(否む)-いなぶる
カ接:かなぐる(か+なぐる投)
シ接:しなぶ/しなむ
  :しのぐ凌(し+のぐ逃)
マ接:まぬがる免(ま+ぬがる逃)-まぬがれる
   まのがる免(ま+のがる逃)-まのがれる
ミ接:みなぎる-みなぎらふ
ム接:むなし(空*虚)「むなくに空国、むなこと空言、むなて/たむなて徒手」

 「ない無」という状態をもとに、「なくす、なくなる」という行為や状況を和語ではナ行渡り語で把握していると見る。
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な( )-なぐ(和ぐ)-なぐす(慰ぐす)-なぐさむ-なぐさめる「なぎ凪」「なごし和シ、なごや/なごやか和」
                         -なぐさもる
           -なごす(慰ごす)
           -なごむ(和ごむ)-なごます-なごませる
    -なづ(撫づ)-なだす(宥だす)「うちなづ打宥、かきなづ掻宥、とりなづ取宥、もちなづ持宥」
           -なだむ(宥だむ)-なだまる
                    -なだめる-なだめらる
           -なだる(穏だる)-なだらむ
           -なづる(撫づる)
           -なでる(撫でる)-なでらる-なでられる
    -なづ(泥づ)-なづく(泥づく)
           -なづす(泥づす)-なづさふ-なづさはる「おちなづさふ落泥」
           -なづむ「くれなづむ(暮泥)」
    -なゆ(軟ゆ)-なやす(軟やす)《なよなよ》
に( )-にき(柔和)-にきぶ(和きぶ)
           -にきむ(和きむ)
    -にぎ(熟ぎ)-にぎむ(熟きぶ)
    -にこ(柔和)-にこぶ(和こぶ)《にこにこ》
           -にこむ(和こむ)「にこむ」
    -にゆ(煮ゆ)-にやす(煮やす)「にもの煮物、にこごり、にたき煮焚;業を煮やす」
           -にyeる(煮yeる)
    -にる(煮る)-にらぐ(煮らぐ)〔”柔らかくする”が原義と考えられる〕
           -にらる(煮らる)-にられる
ぬ( )-ぬく(温く)-ぬかる(温かる)-ぬかるむ
           -ぬくむ(温くむ)-ぬくまる「ぬくし温シ」《ぬくぬく》
                    -ぬくめる
                    -ぬくもる
    -ぬす(塗す)-ぬする(塗する)
    -ぬめ(滑め)-ぬめる(滑める)
    -ぬる(濡る)-ぬらす(濡らす)-ぬらせる「ぬるし温シ」「ぬで/ぬるで白膠木」《ぬるぬる》
           -ぬるふ(濡るふ)-ぬるほふ
           -ぬるむ(温るむ)-ぬるます
                    -ぬるめる
           -ぬれる(濡れる)
    -ぬる(塗る)-ぬらす(塗らす)-ぬらせる(塗料を塗布する)
           -ぬらる(塗らる)-ぬられる
    -ぬる(緩る)-ぬらす(緩らす)「ひきぬる引緩」(弛緩する、緩む)
           -ぬるむ(緩るむ)-むるまる
                    -ぬるめる
う( )-うる(潤る)-うるふ(潤るふ)-うるほす「うるはし潤はシ/麗シ」「うるし/ぬるし漆」
                    -うるほふ
           -うるむ(潤るむ)-うるます-うるませる
           -うれふ(憂れふ)-うれへる
ね( )-ねぐ(労ぐ)-ねがふ(願がふ)
           -ねぎる(労ぎる)-ねぎらふ
の( )-のど(長閑)-のどむ(長閑む)-のどまる「のどか長閑、のどし」
           -のどゆ(長閑ゆ)-のどよふ

ア接:「あなづ侮(あ+なづ撫)-あなづる/あなどる」

 気分や気温、温度、堅さ、乾燥度などなどについて、それらが高低どちらの側にも偏っていない、中間である、中庸であるということを上記のナ行渡り語で表現している。
 水に「濡る-濡れる」、ぬるぬるになる「潤る」、少し温度が上がる「温る」、糊を「塗る」は同語である。「のり糊」と「ぬる塗」は(nr)縁語と見られる。
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な( )-なぐ(眺ぐ)-ながむ(眺がむ)-ながめる(長む/詠む/眺む-長める/眺める)
に( )-にむ(睨む)
    -にる(睨る)-にらむ(睨らむ)-にらます-にらませる
                    -にらまふ(「にる」は残らなかった)
                    -にらまる-にらまれる
ぬ( )-ぬす(盗す)-ぬすむ(盗すむ)-ぬすます-ぬすませる「ぬすびと盗人」
                    -ぬすまふ
                    -ぬすまる-ぬすまれる
ね( )-ねぶ(睨ぶ)
    -ねむ(睨む)-ねまる(睨まる)
           -ねめる(睨める)
    -ねる(睨る)-ねらふ(狙らふ)-ねらはす-ねらはせる
                    -ねらはる-ねらはれる「wuかねらふ窺狙」
の( )-のず(覗ず)-のぞく(覗ぞく)-のぞかす-のぞかせる
                    -のぞかる-のぞかれる
           -のぞむ(望ぞむ)-のぞます
                    -のぞまる-のぞまれる

 目で「見る」という動作であってもただ見るのではなく、さまざまな意図をもって見ることをナ行渡り語でもって言い分けている。場合によって見る姿勢も自ずから変わってくる。「こっそり見る」が「ぬすむ」の本意。
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な( )-なす(生す/成す/為す/済す)
    -なる(生る/成る/為る/済る)
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な(寝)-なす(寝す)-なさす(寝さす)「な寝」
    -なむ(寝む)
ぬ(寝)-ぬる(寝る)「ぬ寝」「いぬイ寝、さぬサ寝、よりぬ寄宿、ゐぬ居寝*率寝」
ね(寝)-ねく(寝く)-ねかす(寝かす)「ね寝、さね/さねど/さねどこ」」
    -ねす(寝す)-ねさす(寝さす)-ねさせる
    -ねぶ(寝ぶ)-ねぶる(寝ぶる)-ねぶらす-ねぶらせる
    -ねむ(寝む)-ねむる(寝むる)-ねむらす-ねむらせる
                    -ねむれる
    -ねる(寝る)-ねらる(寝らる)-ねられる

イ接語「いぬ(い+ぬ寝)-いをぬ寝寝、いねかつ寝勝、いねかぬ、いねふす;うまい熟寝
サ接語「さぬ(さ+ぬ寝)-さなす
シ接語「しぬ(し+ぬ寝)-しなす(し+なす)」

 イ接語「いぬイ寝」は、シ接語「しぬ寝」が本来形で、時代を経て「いぬ寝」に移行したと考えられる。(s-&)相通現象である。
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な(似)-なす(擬す)-なする(擬する)
           -なそふ(擬そふ)
    -なず(準ず)-なずふ(擬ずふ)
           -なずる(擬ずる)-なずらふ-なずらへる「おもひなずらふ」
           -なぞふ(準ぞふ)-なぞはす
           -なぞる(擬ぞる)-なぞらす-なぞらせる
                    -なぞらふ-なぞらへる
                    -なぞらる-なぞられる
    -なる(慣る)-ならす(慣らす)-ならせる-ならせらる-ならせられる
           -ならふ(習らふ)-ならはす-ならはせる
           -なれる(慣れる)
に(似)-にす(似す)-にさす(似さす)「にせ(似せ/偽)、まねびにす学似」
           -にせる(似せる)
    -につ(似つ)-につく(似つく)-につかふ「につかはし」
    -にる(似る)
ぬ(似)
の(似)-のる(似る)

マ接:まぬ(真似)-まなぶ(学なぶ)-まなばす-まなばせる「まぬ真似(ま+ぬ似)」
         -まねぶ(学ねぶ)
         -まねる(真似る)-まねらる-まねられる「まね(真似)」
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な( )-なふ(綯ふ)「なは(縄)」
ぬ( )-ぬふ(縫ふ)-ぬはす(縫はす)-ぬはせる「かさぬひ笠縫、たてぬひ盾縫」
           -ぬはる(縫はる)-ぬはれる
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な( )-なふ(萎ふ)-なへく(萎へく)「あしなへ足萎/蹇、あしなへく躄、しなふ、てなへ手萎/攣」
           -なへぐ(萎へぐ)
           -なへる(萎へる)
    -なぶ(萎ぶ)「しなぶ-しなびる萎」
    -なゆ(萎ゆ)-なやす(萎やす)《なよなよ》
           -なyeぐ(萎yeぐ)
           -なyeる(萎yeる)
           -なゆむ(萎ゆむ)「あなゆむ足萎」
           -なよぶ(萎よぶ)「なよびすぐす萎過、なよびゆく萎行」
ね( )-ねぶ(陳ぶ)-ねびる(陳びる)
    -ねゆ(萎ゆ)-ねやす(萎やす)

シ接語「しなふ/しなぶ萎(し+なぶ萎)-しなびる」《しなしな》
   「しなゆ萎(し+なゆ萎)」
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な( )-なぶ(並ぶ)-なびく(靡びく)-なびかす-なびかせる「おしなぶ押靡、かが並べて、たなびく」
                    -なびかふ
           -なべる(並べる)
    -なむ(並む)「なみ(波*並)、なと/なみと波音、なをり波折、かはなみ川並*川次、つらなむ列並」
    -なる(並る)-ならぶ(並らぶ)-ならばす-ならばせる「あひならぶ、ふたならぶ、ゆきならぶ」
                    -ならばる-ならばれる
                    -ならべる「ならびゐる、ならびをる」
ぬ( )-ぬく(仰く)「あふぬく仰伸」
の( )-のく(仰く)-のかす(仰かす)「あふのく仰伸、のけぞる仰反」
    -のす(伸す)-のさす(伸さす)-のさせる「のさばる」「のし熨斗、のしもち伸餅」
           -のせる(伸せる)-のせらる-のせられる
    -のぶ(伸ぶ)-のばす(伸ばす)-のばさす-のばさせる「のびのび~のんびり」
                    -のばさる-のばされる
                    -のばせる
           -のばふ(伸ばふ)
           -のびる(伸びる)
           -のべる(述べる)
           -のぼす(伸ぼす)-のぼせる(上せる)
           -のぼる(伸ぼる)-のぼらす-のぼらせる(登る)
    -のむ(伸む)-のめす(伸めす)「たたきのめす」
           -のめる(伸める)「つんのめる、のめりこむ伸込、まへのめり前伸」
    -のる(乗る)-のらす(乗らす)-のらせる
           -のらる(乗らる)-のられる

シ接:しのぶ忍(し+のぶ伸)-しのばす-しのばせる
                          -しのばる-しのばれる
              -しのぶる-しのぶらふ
タ接:たなびく(ト接「とのびく」は「たなびく」の異形と見る)
   たのす伸(た+のす伸)-「たのし(楽シ)」
   たのむ恃(た+のむ伸)-「たのもし(恃もシ/頼もシ)」
チ接:ちなむ因(ち+なむ並)
ツ接:つのる募(つ+のる伸)
ト接:となる隣(と+なる並)
ナ接:ななむ斜(な+なむ並)
ノ接:ののす伸(の+のす伸:ののす-ののしる-ののしらる)

 水平や上下にものや体を延伸することを言う語群である。ひとつ「のる乗」に引っかかるが、この時代、水辺の舟や筏でなければ「乗る」ものは肩車くらいしかない。「のる」とは「のす、のぶ」などと同じで、体を伸ばす動作のひとつを言っていたはずである。
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     なほ(直ほ)-なほす(直ほす)-なほさる-なほされる
           -なほぶ(直ほぶ)「なほび直毘/おほなほびうた〔直会の宴に歌われる歌〕」
           -なほる(直ほる)-なほらふ「なほらひ直会」
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     なま(鈍ま)-なまく(怠まく)-なまける
           -なます(鈍ます)「やきなます焼鈍」(類「にらぐ」)
           -なまる(鈍まる)
     にぶ(鈍ぶ)-にばむ(鈍ばむ)「にぶし鈍シ」
           -にぶむ(鈍ぶむ)
           -にぶる(鈍ぶる)-にぶらす-にぶらせる
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な( )-なむ(舐む)-なめす(鞣めす)「かはなめし皮鞣」「なめづる」
           -なめる(嘗める)-なめらる-なめられる
    -なぶ(舐ぶ)-なぶる(嬲ぶる)
た( )-たぶ(食ぶ)-たばす(食ばす)(賜ばす)(n-t相通形)
           -たばふ(食ばふ)(賜ばふ)-たばはす
           -たばる(食ばる)(賜ばる)
           -たぶる(食ぶる)
           -たべす(食べす)-たべさす-たべさせる
           -たべる(食べる)-たべらる-たべられる
    -たむ(賜む)-たまふ(賜まふ)-たまはす
                    -たまはる
           -たまる(賜まる)
           -たもふ(賜もふ)
           -たもる(賜もる)
ね( )-ねぶ(舐ぶ)-ねぶる(嘗ぶる)
の( )-のむ(飲む)-のます(飲ます)-のませる-のませらる-のませられる「のど喉」
           -のまる(飲まる)-のまれる

ノ接:「のたぶ宣(の+たぶ/たむ賜)-のたまふ」

 「たべる」は、「たむ/たぶ賜-たまふ/たばふ」とは無関係の語で、上記のように単に「なむ舐」の(n-t)相通語と考えられる。そのことは、「たべる」の形が「たむ/たぶ賜-たまふ/たばふ」語からは出てこないことからも言えるであろう。
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な( )-なむ(祈む)
ね( )-ねく(祈く)
    -ねぐ(祈ぐ)-ねがふ(願がふ)「ねぎ禰宜」
           -ねぎる(労ぎる)-ねぎらふ
の( )-のむ(祈む)「こひのむ乞祈、はらへのむ祓祈」
    -のる(告る)-のろふ(呪ろふ)-のろはる-のろはれる

イ接:いのる祈-いのらす-いのらせる
コ接:このむ好-このまる-このまれる
タ接:たのむ頼-たのまる-たのまれる「たのもし頼もシ(憑む/恃む)」
ツ接:つのる募
マ接:まねく招-まねかる-まねかれる
   まねぐ招
--------------------
    -なる(狎る)-なれる(狎れる)「なれなれし」
--------------------
な( )-なる(平る)-ならす(平らす)-ならせる「ならやま平城山、ふみならす踏均*踏平」
--------------------<ににに>
に(丹)-にふ(丹ふ)-にほす(丹ほす)
           -にほふ(丹ほふ)-にほはす-にほはせる「にほひ匂」
           -にほゆ(丹ほゆ)「にほyeをとめ」
--------------------
           -によぶ(呻吟ぶ)
--------------------<ぬぬぬ>
--------------------<ねねね>
ね( )-ねづ(捻づ)-ねぢく(捻ぢく)-ねぢける
           -ねぢる(捻ぢる)
    -ねゆ(黏ゆ)-ねやく(黏やく)-ねやかる
           -ねやす(黏やす)「ねやしきぬ黏絹」
           -ねゆる(黏ゆる)
    -ねる(練る)-ねらす(練らす)「くすね薬練」
           -ねらる(練らる)-ねられる
                 -ねれる(練れる)

ク接:くぬ-くねる(転ねる)
コ接:こぬ-こなす(熟なす)
     -こなる(熟なる)-こなれる
     -こねる(捏ねる)
ゴ接:ごぬ-ごねる(捏ねる)-ごねらる-ごねられる
ス接:すぬ-すねぶ(拗ねぶ)
     -すねる(拗ねる)
ツ接:つぬ-つねる(抓ねる)-つねらる-つねられる
ヒ接:ひぬ-ひねる(捻ねる)-ひねらる-ひねられる
wu接:wuぬ-wuねる(畝ねる)

 「な(練)」「ぬ(練)」があったであろう。
--------------------<ののの>
--------------------

動詞図(4)た行動詞

--------------------<たたた>
     たか(高か)-たかむ(高かむ)-たかまる
                    -たかめる
           -たかぶ(高かぶ)-たかぶる
     たく(猛く)-たけぶ(猛けぶ)「たけし(猛シ)、たけだけし(猛々シ)」「をたけび雄叫」「さけぶ」
           -さけぶ(叫けぶ)(t-s相通形)
           -たける(猛ける)「たけりくるふ(猛狂)」

ア接:あたく(叫く)
ワ接:わたく(叫く)(w-&相通形)
--------------------
た(手)-たく(手く)=たたく(叩たく)-たたかす-たたかせる
                    -たたかふ-たたかはす-たたはせる(戦ふ)
                    -たたかる-たたかれる
           -たくす(手くす)「(髪や袖を)たくしあげる」
           -たくむ(巧くむ)「たくまし快シ、たくみ巧*匠」
           -たくる(企くる)-たくらむ
           -たぐる(手ぐる)(「くる繰」のタ接とも)
           -たける(長ける)〔長ずる、上手である〕
    -たぬ(手ぬ)=たたぬ(畳たぬ)-たたなふ-たたなはる「くりたたぬ」「たたなづく」
    -たむ(手む)=たたむ(畳たむ)-たたます-たたませる
                    -たたまる-たたまれる
だ(手)-だく(抱く)-だかす(抱かす)-だかせる
           -だかる(抱かる)-だかれる
つ(手)-つく(築く)-つかぬ(束かぬ)-つかねる-つかねらる-つかねられる「つか束、つか塚、つかさ阜」
           -つかふ(使かふ)-つかはす-つかはせる「「つかひめ使女、みつかふつみ身使罪*徒罪」
                    -つかはる-つかはれる
                    -つかへる(仕へる)
           -つかむ(掴かむ)-つかます-つかませる「つか束/柄」
                    -つかまふ-つかまへる
                    -つかまる-つかまれる
           -つくる(築くる)-つくらす-つくらせる(作る)
                    -つくらふ(繕ふ)
                    -つくらる-つくられる
                    -つくろふ-つくろはす-つくろはせる(繕ふ)
    -つる(手る)-つれる(釣れる)
つ(手)-つく(突く)=つつく(突つく)-つつかす-つつかせる「きつつき啄木鳥」
                    -つつかる-つつかれる
           -つかす(突かす)-つかせる
           -つかる(突かる)-つかれる
    -つく(捏く)-つくぬ(捏くぬ)-つくねる「つくね捏」
    -つぬ(突ぬ)「つの角」
て(手)
と(手)-とぬ(手ぬ)=ととぬ(整とぬ)-ととのふ-ととのへる
    -とる(手る)-とらす(取らす)-とらせる-とらせらる-とらせられる「みとらし御執*御弓」
           -とらふ(捕らふ)-とらはる-とらはれる「とらへひと囚徒*囚人」
                    -とらへる-とらへらる-とらへられる
           -とらむ(捕らむ)-とらまふ-とらまへる
           -とらる(取らる)-とられる
           -とれる(取れる)

ア接:あつ(当つ)-あたく(当たく)「あたかも当*恰」
         -あたふ(与たふ)-あたはす(能わす)「あたひ値」
                  -あたへる-あたへらる
         -あたる(当たる)
         -あてる(当てる)-あてらる-あてられる
イ接:いづ-いぢる(弄る)
ウ接:うつ(打つ)-うたす(打たす)-うたせる「ぶつ打-ぶち/むち鞭」
         -うたふ(歌たふ)-うたはす-うたはせる
                  -うたはる-うたはれる
         -うたふ(訴たふ)-うったふ-うったへる-うったへらる-うったへられる
                  -うるたふ-うるたへる
         -うたる(打たる)-うたれる
ウ接:うだく
キ接:きづく(築く)
コ接:こづ-こぢる(抉る)
ス接:すづ-すぢる「すぢりもぢる撚曲」
ネ接:ねづ-ねぢる-ねぢらる-ねぢられる(捩る-ねぢまげる)
         -ねぢれる
ブ接:ぶつ(打つ)-ぶたる(打たる)-ぶたれる「むち鞭」
ム接:むだく
モ接:もづ-もぢふ
     -もぢる(捫ぢる)「すぢりもぢる撚曲」
ヨ接:よづ-よぢる(捩ぢる)-よぢれる
コ接:こづく
ド接:どつく
--------------------
た( )-たく(集く)-たかる(集かる)-たからる-たかられる「人だかり」
    -たす(足す)
    -たむ(溜む)-たまる(溜まる)
           -ためる(溜める)-ためらる-ためられる
    -たる(足る)-たらす(足らす)-たらせる
           -たらふ(足らふ)-たらはす「こころたらひ心足」
           -たりる(足りる)
つ( )-つむ(積む)=つつむ(包つむ)-つつます-つつませる「かりつむ刈、yiねつみ稲」「つつみ堤」
                    -つつまる-つつまれる
           -つます(積ます)-つませる-つませらる-つませられる
           -つまる(詰まる)-つまれる「かむづまる(神留)」
           -つめる(詰める)-つめらる-つめられる
           -つもる(積もる)-つもらす-つもらせる
と( )-とむ(止む)=とどむ(止どむ)-とどまる-とどまらす-とどまらせる「とみ富」
                    -とどめる
           -とます(富ます)-とませる
           -とまる(止まる)-とまらす-とまらせる「ちまる/つまる(かむづまる)」
           -とめる(止める)-とめらる-とめられる
           -ともる(滞もる)-とどもる

ア接:あつむ(集む)-あつまる
          -あつめる
シ接:しとむ(仕留)-しとめる
ス接:すだく(集く)
マ接:まとぶ(纏ぶ)
   まとむ(纏む)-まとまる
          -まとめる
--------------------
た( )-たく(焚く)-たかす(焚かす)-たかせる「たきぎ焚木、たきび焚火」(炊く)
           -たかる(焚かる)-たかれる
           -たける(焚ける)
--------------------
た( )-たく(闌く)-たける(闌ける)
--------------------
た( )-たく(長く)-たける(長ける)
--------------------
た( )-たく(斜く) 〔日の盛りが過ぎる、かげる〕
--------------------
た( )-たぐ(食ぐ)「あひたげびと相食人、米だにも’たげて’通らせ」
--------------------
た( )-たぐ(滾ぐ)-たぎつ(滾ぎつ)「おちたぎつ落滾、たぎつせ滾瀬」
           -たぎる(滾ぎる)-たぎらす「煮へ滾る」
--------------------
た( )-たぐ(似ぐ)-たぐふ(偶ぐふ)-たぐはる「たぐひ(類)」
                    -たぐばる
                    -たぐへる
                    -たうばる〔似る〕
--------------------
           -たぐる(吐ぐる)
--------------------
た( )-たつ(立つ)-たたす(立たす)-たたせる(発つ)「みたたし御立」「たて縦」
           -たたる(立たる)-たたれる
           -たてる(立てる)-たてらる-たてられる(建てる)

ス接:すだつ
ソ接:そだつ-そだてる
ヒ接:ひだつ
--------------------
た( )-たつ(絶つ)-たたす(絶たす)-たたさる-たたされる
                    -たたせる
           -たたる(絶たる)-たたれる
    -たふ(倒ふ)-たはる(仆はる)「よこたはる横仆」
           -たふす(仆ふす)-たふさす-たふさせる「けものたふし畜仆」
                    -たふさる-たふされる
           -たふる(仆ふる)-たふれる
           -たへる(仆へる)「よこたへる横仆」
    -たゆ(絶ゆ)-たやす(絶やす)-たやさる-たやされる
           -たyeる(絶yeる)
つ( )-つく(尽く)-つかす(尽かす)-つかさる-つかされる
                    -つかせる
           -つかる(尽かる)-つからす-つからせる(疲る)
                    -つかれる(疲れる)
           -つきる(尽きる)
           -つくす(尽くす)
           -つくる(尽くる)
    -つふ(潰ふ)-つひゆ(潰ひゆ)-つひやす「つひ終、つひのすみか終棲」
                    -つひyeる
    -つゆ(潰ゆ)-つyiゆ(潰yiゆ)-つyiやす
                    -つyiyeる
           -つゆる(潰ゆる)

ト接:とだゆ途絶(と+たゆ絶)-とだyeる
モ接:もだゆ悶絶(も+たゆ絶)-もだyeる
--------------------
た( )-たづ(尋づ)-ただす(質だす)-たださす-たださせる(質す/糾す/正す/直す)「ただし(正シ)」
                    -たださる-ただされる
           -たづぬ(尋づぬ)-たづねる-たづねらる-たづねられる「たづねく来、たづねもとむ」
           -たどる(辿どる)-たどらす-たどらせる
          (-たづす)    -たづさふ-たづさはる
                         -たづさへる
--------------------
た( )-たは(戯は)-たはく(戯はく)-たはける「たはけ、たはし戯シ」
           -たはす(戯はす)-たはしる
           -たはぶ(戯はぶ)-たはぶる-たはぶれる
           -たはむ(戯はむ)-たはむる-たはむれる
    -たぶ(誑ぶ)-たぶる(誑ぶる)-たぶらく-たぶらかす「くなたぶれ」
                    -たぶらす
                    -たぶろく-たぶろかす
                    -たほろく-たほろかす
                    -たぼろく-たぼろかす
    -なぶ(嬲ぶ)-なぶる(嬲ぶる)「ひとなぶり」(t-n相通形)
    -たる(誑る)-たらく(誑らく)-たらかす「たるし」《たらたら》
           -たらす(誑らす)「たらしこむ誑込、をんなたらし女蕩」
    -たる(弛る)-たるむ(弛るむ)
だ( )-だる(蕩る)-だらく(蕩らく)-だらける《だらだら》「だらしなし(だらしがいっぱい)」
           -だれる
と( )-とる(蕩る)-とらく(蕩らく)-とらかす
           -とらす(蕩らす)
           -とれる(蕩れる)「みとれる(見蕩)」
           -とろく(蕩ろく)-とろかす《とろとろ》
                    -とろける
           -とろむ(蕩ろむ)-とろめく
           -とろる(蕩ろる)-とろろく

マ接:まどろむ
ミ接:みだ(乱だ)-みだす(乱だす)-みださる-みだされる
         -みだゆ(乱だゆ)
         -みだる(乱だる)-みだれる「みだら淫」
--------------------
た( )-たふ(堪ふ)=たたふ(湛たふ)-たたへる
           -たふる(堪ふる)
           -たへる(堪へる)-たへらる-たへられる
    -たふ(称ふ)=たたふ(称たふ)-たたはす「たたはし偉」
                    -たたへる〔すぐれる、霊妙である〕「たへ妙」
    -たゆ(堪ゆ)=たたゆ(湛たゆ)-たたyeる
           -たyeる(堪yeる)

ア接:あたふ能
イ接:いたふ労-いたはる(い+たふ堪/耐)
コ接:こたふ湛-こたへる(こ+たふ堪/耐)
   こたゆ堪-こたyeる
   こらふ堪-こらへる(t-r)相通語
   こらゆ堪-こらyeる
タ接:たたふ湛-たたへる(頭積語とも)
   たたゆ湛-たたyeる(頭積語とも)
--------------------
た( )-たむ(賜む)-たまふ(賜まふ)-たまはる「まwuしたまふ/まをしたまふ申賜」
           -たまる(賜まる)
           -たもる(賜もる)
    -たぶ(賜ぶ)-たばす(賜ばす)
           -たばふ(賜ばふ)-たばはる
           -たばる(賜ばる)
          〔-たべす(食べす)-たべさす-たべさせる〕
          〔-たべる(食べる)-たべらる-たべられる〕

ノ接:のたむ(告賜)-のたまふ-のたまはる
   のたぶ(告賜)-のたばふ
--------------------
た( )-たむ(矯む)-ためす(矯めす)「角をためて牛を殺す」
           -ためる(矯める)-ためらふ(躊躇)
--------------------
た( )-たむ(訛む)
だ( )-だむ(黙む)-だます(騙ます)-だまさる-だまされる「舌だむ」
    -だむ(訛む)-だまる(訛まる)「舌だむ」
           -だまる(黙まる)-だまらす-だまらせる
ど( )-どむ(黙む)-どもる(吃もる)「どもり(吃)」
な( )-なむ(訛む)-なまる(訛まる)(t-n相通形)
--------------------
た( )-たむ(嘔む)-たまふ(嘔まふ)「たむ逆吐、むかたむ」
--------------------
た( )-たむ/だむ(彩む)「だみ絵、薄だみ、金だみ」
--------------------
た( )-たる(垂る)=たたる(祟たる)-たたらる-たたられる
           =ただる(爛だる)-ただれる
           -たらす(垂らす)-たらせる「たるき垂木、たるみ垂水、すだれ簀垂/簾、たれす垂簾」
           -たれる(垂れる)
つ( )-つる(吊る)-つらす(吊らす)-つらせる
           -つらる(吊らる)-つられる
           -つれる(吊れる)〔”(魚を)釣る”は”とる”の縁語と見る〕
--------------------
た( )-たwu(撓wu)-たわむ(撓わむ)-たわめる《たわたわ-たわわ》
             -たわる(撓わる)
             -たwuぐ(撓wuぐ)「たwu(撓wu)」「たwuげ峠」
             -たをむ(撓をむ)「たを(撓を)」
             -たをゆ(撓をゆ)-たをやぐ「たをやか」《たをたを》
             -たをる(撓をる)
と( )-とゐ(撓ゐ)「とゐなみ撓波」
    -とwu(撓wu)-とゑる(撓ゑる)-とゑらふ〔波がうねり立つ〕
             -とをむ(撓をむ)「とを(撓)」《とをとを-とをを》
             -とをゆ(撓をゆ)-とをゆる
                      -とをよる
             -とをる(撓をる)-とをらふ
--------------------<ちちち>
            ちぎる(契ぎる)「ちぎり契」
--------------------
ち(小)-ちく(小く)=ちぢく(縮ぢく)-ちぢかむ-ちぢかまる
                    -ちぢくる-ちぢくれる
                    -ちぢこむ-ちぢこまる
    -ちぶ(禿ぶ)-ちびる(禿びる)〔擦り減る〕
    -ちむ(禿む)=ちぢむ(縮ぢむ)-ちぢまる「ちぢみ縮」
                    -ちぢめる
    -ちる(散る)=ちぢる(縮ぢる)-ちぢらす-ちぢらせる(散る)
                    -ちぢれる
           -ちらく(散らく)-ちらかす
                    -ちらかる
                    -ちらける
           -ちらす(散らす)-ちらせる「しがらみちらす、なきちらす、ゐちらす」
           -ちらふ(散らふ)
           -ちらぶ(散らぶ)-ちらばる-ちらばらす-ちらばらせる
し(小)-しく(縮く)=しじく(縮じく)-しじかむ-しじかまる(縮かむ)(t-s相通形)
    -しむ(縮む)=しじむ(縮じむ)-しじまふ(進退)「しじみ蜆」
                    -しじまる(縮まる)
                    -しじめる
    -しる(縮る)=しじる(縮じる)-しじれる(縮れる)
つ( )-つづ(約づ)-つづむ(約づむ)-つづまる「つづ星」
                    -つづめる
           -つづる(綴づる)-つづろふ
    -つぶ(粒ぶ)-つぶす(潰ぶす)-つぶさる-つぶされる
           -つぶる(潰ぶる)-つぶらす-つぶらせる
                    -つぶれる
           -つむる(瞑むる)-つむらす-つむらせる
    -つむ(粒む)=つづむ(約づむ)-つづまる
                    -つづめる
す( )-すず(約ず)「すず鈴」(t-s相通形)
--------------------<つつつ>
         つかぬ(束ぬ )-つかねる「つか束*柄、とりつかぬ取束、むすびつかぬ結束」
         つかむ(柄む )-つかまふ-つかまへる
                 -つかまる
--------------------
        -つかふ(遣かふ)-つかはす-つかはさる-つかはされる〔派遣する〕
                      -つかはせる
                 -つかはる-つかはれる
--------------------
つ( )-つく(付く)=つづく(続づく)-つづかす-つづかせる
                    -つづける-つづけらる-つづけられる
           -つかす(付かす)-つかせる
           -つかる(憑かる)-つかれる
           -つける(付ける)-つけらる-つけられる
と( )-とく(着く)=とどく(届どく)-とどかす-とどかせる
                    -とどける-とどけらる-とどけられる

ア接:あづく-あづかる(預かる/与かる)
      -あづける(預ける)-あづけらる-あづけられる
ナ接:なつく(な馴+つく)
--------------------
つ( )-つく(吐く)-つかす(吐かす)-つかせる-つかせらる-つかせられる「息をつく、嘘をつく」
           -つかる(吐かる)-つかれる
           -つける(吐ける)
--------------------
つ(水)-つく(漬く)-つかる(漬かる)
           -つける(漬ける)-つけらる-つけられる

カ接:かづく潜

 時系列「つ-みづ-み(水)」の最初の「つ」時代の語か。「つく」は、水が「たる垂」「たむ溜」「つつ伝」「とく溶」などとともに「つ水」をもとにするタ行渡り語群として括ることができると思われる。
--------------------
つ( )-つく(調く)-つくぬ(調くぬ)-つくなふ/つぐなふ(償ふ)
                    -つくのふ
--------------------
つ( )-つぐ(継ぐ)-つがす(継がす)-つがせる-つがせらる-つがせられる「つぐ告」「つぐ注」
           -つがふ(番がふ)-つがへる「つがひ番」「(弓に矢を)つがへる」
           -つがる(連がる)-つがれる
           -つぎつ(継ぎつ)
           -つぐる(告ぐる)
           -つげる(告げる)-つげらる-つげられる
す( )-すぐ(次ぐ)-すがふ(縋がふ)(t-s相通形)
           -すがる(縋がる)「すがりつく縋付、おひすがる、とりすがる」
つ( )-つつ(伝つ)-つたぬ(伝たぬ)「いひつつ言伝」「つて伝手、ことづて言伝」
           -つたふ(伝たふ)-つたはる
                    -つたへる-つたへるら-つたへられる
    -つぬ(継ぬ)-つなぐ(継なぐ)-つながる-つながれる〔「綱ぐ」は無理〕
    -つる(連る)=つづる(綴づる)-つづろふ「ももつづり百綴」「つるぎ剣、つるべ釣瓶」
           -つらす(連らす)-つらさす
                    -つらさる-つらされる
                    -つらせる
           -つらぬ(連らぬ)-つらなる
                    -つらねる-つらねらる-つらねられる
           -つらふ(連らふ)-つらはす-つらはせる
           -つらぶ(連らぶ)
           -つらる(連らる)-つられる
           -つるぶ(連るぶ)「つるび遊牝」
           -つるむ(連るむ)
           -つれる(連れる)-つれらる-つれられる
           -つろふ(連ろふ)
マ接:まつる祭(マ連)-まつらる-まつられる「まつり祭、まつりごと政、たてまつる奉」
           -まつらふ
           -まつろふ(服ふ/順ふ)「おもひまつろふ思纏、まつろはぬひと」
--------------------
つ( )-つつ(嘰つ)-つつす(嘰つす)-つつしる(嘰る)-つつしろふ〔少しづつ食べる〕
    -つむ(噛む)〔前歯で噛る〕
--------------------
つ( )-つづ(綴づ)-つづる(綴づる)-つづらる-つづられる
と( )-とづ(閉づ)-とだす(閉だす)(「とざす閉」(d-z)相通語)
           -とぢむ(閉ぢむ)
           -とぢる(閉ぢる)-とぢらる-とぢられる(綴ぢる)
           -とづる(閉づる)
--------------------
つ(爪)-つぬ(抓ぬ)-つねる(抓ねる)-つねらる-つねられる
    -つむ(抓む)-つまむ(抓まむ)-つまます-つまませる「つめ爪」
                    -つままる-つままれる
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つとむ(務とむ)-つとまる
                    -つとめる
--------------------
     つは(  )-つはく(凸はく)-つはくむ〔芽が出る〕
           -つはる(凸はる)〔つはり悪阻〕
.--------------------
    -つぶ(粒 )-つぶす(粒ぶす)-つぶさす
                    -つぶさる-つぶされる
           -つぶる(潰れる)-つぶれる
    -つむ(  )-つむる(瞑むる)
    -つほ
    -つぼ(壺 )-つぼむ(壺ぼむ)-つぼます「つぼ壺」「つぼ坪」
                    -つぼまる
                    -つぼめる
    -すぶ(窄ぶ)-すぼむ(窄ぼむ)-すぼます(t-s相通形)
                    -すぼまる
                    -すぼめる
--------------------
つ( )-つむ(詰む)-つまる(詰まる)-つまらす-つまらせる
           -つめる(詰める)-つめらる-つめられる
--------------------<ててて>
て( )-てる(照る)-てらす(照らす)-てらさふ「あまてらす天照、たかてらす高」《てらてら》
                    -てらさる-てらされる
           -てらふ(衒らふ)-てらはす
           -てれる(照れる)
--------------------<ととと>
と(聡、敏、鋭、利、疾、捷)「とし」「さとし」

サ接:        -さとす(諭とす)-さとさる-さとされる
           -さとる(悟とる)-さとらる-さとられる
--------------------
と(音)-とぬ(音ぬ)-となふ(唱なふ)-となへる
    -とふ(問ふ)-とはす(問はす)-とはせる
           -とはる(問はる)-とはれる
    -とぶ(弔ぶ)-とぶる(弔ぶる)-とぶらふ/とむらふ(弔ふ)
    -とむ(覓む)「ともし/とぼし(乏シ)-ともしぶ/とぼしぶ、つまし(倹シ)」
    -とゆ(響ゆ)-とよく(響よく)
           -とよむ(響よむ)-とよめく(鳴動)
                    -とよもす
    -どゆ(響ゆ)-どよむ(響よむ)-どよめく
                             -どよもす
    -とる(問る)(「とる(問る)」は今日に残らなかった)

ア接:あとふ〔誘う、招聘する〕(「さどふ」の&-s相通形)
   あとる-あとらふ-あとらへる(誂らふ)
      -あつらふ-あつらへる(誂らふ)
イ接:いどむ(挑む)-いどまる-いどまれる(とむ覓)
オ接:おと(音)-おとづる(訪る、音づる)
        -おとなふ(訪ふ、音なふ)
カ接:かどふ(勾引ふ)
サ接:さとふ/さどふ-さどはす(惑ふ、誘ふ)
タ接:たとふ(譬とふ)-たとへる-たとへらる-たとへられる「たとひ、たとへ、たとへば」
   たとゆ(譬とゆ)-たとyeる
ツ接:つどふ(集ふ)「かむつどひつどふ神集」
ト接:とまどふ(戸惑ふ)-とまどはす-とまどはせる-とまどはせらる-とまどはせられる
マ接:まとふ/まどふ(惑ふ)-まとはす/まどはす-まどはせる-まどはせらる-まどはせられる
ミ接:みとむ(認む)〔み+とむ覓〕-みとめる-みとめらる」
モ接:もとむ(求む)-もとまる
          -もとめる-もとめらる-もとめられる
ヤ接:やとふ(雇ふ)-やとはす-やとはせる
          -やとはる-やとはれる
--------------------
と( )-とく(解く)-とかす(解かす)-とかさる-とかされる「ときあく、ときあらふ洗、ときかふ交」
                    -とかせる-とかせらる-とかせられる
           -とかる(解かる)-とかれる
           -とくる(解くる)
           -とける(解ける)
--------------------
と( )-とく(説く)-とこふ(呪ふ/詛ふ)

ク接:くどく(口説く)-くどかる-くどかれる
--------------------
と( )-とぐ(砥ぐ)-とがる(尖がる)-とがらす-とがらせる「とげ棘」
           -とがむ(咎がむ)-とがめる-とがめらる-とがめられる「とが咎」
--------------------
と( )-とぐ(遂ぐ)-とげる(遂げる)
--------------------
と( )-とぐ(伽ぐ)「よとぎ夜伽」
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と( )-とぶ(飛ぶ)-とばす(飛ばす)-とばせる「とび/とんび鳶、とんぼ蜻蛉」
           -とばる(飛ばる)-とばれる
           -とべる(飛べる)
    -とる(飛る)「とり鳥」
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     とほ(遠ほ)-とほす(通ほす)-とほさす-とほさせる「とほし遠シ」
                    -とほさる-とほされる
           -とほる(通ほる)-とほらす-とほらせる
                    -とほらる-とほられる
                    -とほれる

モ接:もとほす廻
   もとほる廻-もとほろふ「はひもとほる這廻-はひもとほろふ」「いはひもとほるイ這廻」
タ接:たもとほるタ廻-たもとほろふ「はひたもとほる-はひたもとほろふ」
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動詞図(3)さ行動詞

--------------------<さささ>
     さか(逆か)-さかふ(逆かふ)
           -さかる(逆かる)-さからふ
--------------------
さ(狭)-さく(狭く)
    -さぐ(下ぐ)-さがる(下がる)
           -さげる(下げる/提げる)
    -さす(止す)
    -さづ(定づ)-さだむ(定だむ)-さだまる「さだか、さだし」
                    -さだめる-さだめらる-さだめられる
           -さづく(授づく)-さづかる
                    -さづける-さづけらる-さづけられる
    -さふ(障ふ)=ささふ(支さふ)-ささへる-ささへらる-ささへられる
           -さはふ(障はふ)
           -さはる(障はる)-さはらす-さはらせる(触はる)
                    -さはらふ
                    -さはらる-さはられる
           -さひく(遮ひく)-さひきる
           -さへく(遮へく)-さへきる
           -さへぐ(遮へぐ)-さへぎる
           -さへぬ(障へぬ)-さへなふ
           -さへる(障へる)
    -さむ(狭む)-さまつ(妨まつ)-さまたぐ-さまたげる「さもし/さぼし(料簡が狭い)」
           -さまる(妨まる)
           -さみす(褊みす)
    -さゆ(障ゆ)-さやす(障やす)
           -さやる(障やる)
し( )-しく(領く)-しかす(領かす)-しかせる〔統治する〕「たかしく高敷、ふとしく太敷」
           -しかる(領かる)-しからる(領く-領かる-領からる)
                    -しかれる(敷く-敷かる-敷かれる)
           -しきる(領きる)
    -しぐ(締ぐ)-しがふ(締がふ)
           -しがむ(締がむ)「しがみつく」
           -しぐふ(締ぐふ)「しぐひあふ」〔情交する〕
           -しぐる(時雨る)「しぐれ時雨」
                    -しぐらふ〔密集する〕
                    -しぐらむ
                    -しぐれる〔時雨れる〕
           -しげむ(茂げむ)「しげみ」
           -しげる(茂げる)-しげらふ「しげし茂シ、しげち茂道、しげの茂野」
    -しつ(滴つ)-したつ(滴たつ)-したたる
           -したづ(滴たづ)
           -したむ(滴たむ)
    -しづ(垂づ)-しだる(垂だる)-しだれる「しづye垂枝、しづ/しで垂」
           -しづく(雫づく)
           -しづむ(沈づむ)-しづまる-しづまらす-しづまらせる
                    -しづめる-しづめらる-しづめられる(鎮める)
                    -しづもる
           -しづる(垂づる)
    -しふ(強ふ)-しひる(強ひる)-しひらる-しひられる「しひかたり、しひて」
    -しぶ(縛ぶ)-しばる(縛ばる)-しばらる-しばられる「くひしばる、とりしばる」
           -しぼむ(搾ぼむ)-しぼめる
           -しぼる(搾ぼる)-しぼらる-しぼられる
    -しむ(締む)-しまる(締まる)
           -しめる(締める)-しめらる-しめられる
    -しむ(占む)-しまふ(占まふ)-しまはす-しまはせる「しめ標、しめなは注連縄、しめゆふ標木綿」
                    -しまはる-しまはれる
           -しまる(占まる)
           -しめす(占めす)-しめさす
           -しめる(占める)-しめらる-しめられる
    -しる(知る)-しらす(知らす)-しらしむ-しらしめす(領る)「たかしる高知」
                         -しらしめる
                    -しらせる
           -しらふ(領らふ)「おyiしらふ老痴」
           -しらむ(領らむ)
           -しらる(領らる)
           -しるす(領るす)「しるし験/印」
           -しれる(領れる)「ゑひしれる酔痴」
           -しろす(領ろす)-しろしむ-しろしめす(所知食)
                         -しろしめる
す( )-すぐ(縋ぐ)-すがふ(縋がふ)
           -すがる(縋がる)-すがらる-すがられる
    -すぶ(窄ぶ)-すぼむ(窄ぼむ)-すぼます-すぼませる
                    -すぼまる
                    -すぼめる
    -すぶ(統ぶ)-すばる(統ばる)「すばる昴、すべつどふ、すべをさむ、みすまる、とりすぶ」
           -すべる(統べる)「すべ術」「すべら皇」
       -すむ(統む)-すまふ(争まふ)「すまひ(相撲)」
           -すまる(統まる)「うづすまる、みすまる御統」
           -すめる(統める)「すめかみ、すめみま、すめら皇、すめらぎ/すめろき皇男」
せ(狭)-せく(狭く)-せかす(堰かす)「せき関、せき堰、せき咳」
           -せかふ(狭かふ)
           -せかる(堰かる)-せかれる
           -せこむ(狭こむ)-せこめる
    -せぐ(縋ぐ)-せがむ(縋がむ)-せがまる-せがまれる
           -せがる(縋がる)
    -せふ(狭ふ)-せはる(狭はる)
    -せぶ(狭ぶ)-せばむ(狭ばむ)-せばまる
                    -せばめる-せばめらる-せばめられる
    -せむ(狭む)-せまる(狭まる)-せまらる-せまられる(攻む)
           -せめく(狭めく)
           -せめぐ(狭めぐ)「せめぎあふ」
           -せめる(狭める)-せめらる-せめられる(攻める)
    -せる(狭る)「せり競」

ア接:あせる (焦る)
ハ接:はさく(挟く)-はさかふ
   はさむ(挟む)-はさまる「はざま狭間」
タ接:たばさむ
ム接:むすぶ結-むすばす-むすばせる「おむすび」
       -むすばる-むすばれる
       -むすべる
       -むすぼふ
       -むすぼる

 「距離が縮まる、狭くなる」意。「おむすび」は、ばらばらの米粒を握りしめて粒と粒との間の距離を密にしたもの。これらは、そのまま権力者が人民を治める統治用語となっている。距離が縮まる意をやや広くとって「力が上から下に及ぶ」意の「しつ/しづ」(鎮圧する)もここに入れた。
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さ( )-さく(咲く)-さかす(咲かす)-さかせる「さき幸、さきはひ幸」
           -さかふ(栄かふ)-さかへる
           -さかゆ(栄かゆ)-さかやく-さかやかす
                    -さかyeる「おひたちさかゆ、にほyeさかゆ、ゑみさかゆ」
           -さかる(盛かる)〔交尾する意も〕
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さ( )-さく(離く)-さかる(離かる)「みさく見、かたりさく語放、とひさく問、とほさかる遠」
           -さくむ(裂くむ)(「さぐくむ」m509/4331)
           -さける(避ける)-さけらる-さけられる
そ( )-そく(退く)-そくす(退くす)「しりぞく後退、みそくす見退」
           -そける(退ける)-そけらる-そけられる
--------------------
さ( )-さぐ(探ぐ)-さがす(探がす)-さがさす-さがさせる「さぐめ探女」
                    -さがさる-さがされる
           -さぐる(探ぐる)-さぐらる-さぐられる「さぐりあさる、かきさぐる」
す( )-すが(眇が)-すがむ(眇がむ)-すがめる「すがめ眇(探るような目つきの意か)」

マ接:まさぐる
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さ( )-さぐ(削ぐ)
す( )-すぐ(削ぐ)-すげぶ
           -すげむ(皺げむ)〔頬がげっそり落ち窪む〕
そ( )-そぐ(削ぐ)-そげる(削げる)

キ接:きさぐ(刮ぐ)
コ接:こそぐ(刮ぐ)-こそげる「根こそぎ」
--------------------
さ( )-さす(差す)-ささぐ(差さぐ)-ささげる(刺す)
           -ささす(刺さす)-ささせる-ささせらる-ささせられる
           -ささる(刺さる)-さされる

カ接:かざす翳
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     ささ(  )-ささく(細さく)「さざ/さざれ(さざなみ細波、ささら筅、さざれいし細石)」
           -ささむ(囁さむ)-ささめく/そそめく
           -ささゆ(囁さゆ)-ささやく/そそやく(囁く)
     すす(  )-すすく(進すく)
           -すすぐ(濯すぐ)
           -すすす(進すす)「すすしきほふ」
           -すすむ(進すむ)-すすます-すすませる
                    -すすめる-すすめらる-すすめられる
           -すする(啜する)-すすろふ
     せせ(  )-せせる(潺せる)-せせらぐ
     そそ(  )-そそく(噪そく)
           -そそぐ(注そぐ)

 ”小さな動き”を言うサ行模写語動詞群である。
--------------------
     ささ(  )「ささ、どうぞ」
     さす(  )-さすふ(誘すふ)
           -さそふ(誘そふ)-さそはる-さそはれる
     すす(  )-すすむ(勧すむ)-すすめる-すすめらる-すすめられる
     そそ(  )         -そそのく-そそのかす
           -そそる(唆そる)-そそらる-そそられる
--------------------
     さは(  )-さはぐ(騒はぐ)「さはがし」
     さば(  )         -さばめく「さばあま(騒海人)」
     さひ(  )         -さひづる(囀ひづる)-さひづらふ
     さへ(  )         -さへづる(囀へづる)-さへづらふ
     さへ(  )-さへく(   )〔鳥がやかましく囀る〕
     しは(  )-しはぐ(   )-しはがる(嗄はがる)-しはがれる(しゃがれる)
           -しはぶ(   )-しはぶく(嗄はぶく)
                    -しはぶる(嗄はぶる)
                    -しはべる(嗄はべる)(しゃべる)
     すは(  )         -すはぶく(嗄はぶく)
     せは(  )「せはし、せはしなし」
     そは(  )「そはそは」
--------------------
さ( )-さむ(覚む)-さます(覚ます)-さまさす-さまさせる〔目覚める〕
                    -さまさる-さまされる
                    -さませる
           -さめる(覚める)
--------------------
さ( )-さむ(冷む)-さます(冷ます)「さむし(寒シ)」
           -さめる(冷める)
し( )-しぶ(凍ぶ)-しばる(凍ばる)-しばれる
           -しびる(凍びる)-しびれる
    -しむ(凍む)-します(凍ます)-しませる「しみどうふ」
           -しみる(凍みる)
--------------------
さ(褪)-さむ(褪む)-さます(褪ます)〔色が浅くなる〕
           -さめる(褪める)
す(褪)

ア接:あす(褪す)-あせる(褪せる)
ウ接:うす(薄す)-うすむ(薄すむ)-うすまる
                  -うすめる-うすめらる
         -うする(薄する)-うすらぐ
                  -うすらふ
                  -うすらむ
                  -うすれる
--------------------
さ( )-さゆ(冴ゆ)-さやむ(冴やむ)
           -さyeる(冴yeる)
--------------------
さ( )-さる(曝る)-さらく(曝らく)-さらける「さら新*更」「さらけ出す」
           -さらす(晒らす)-さらさる-さらされる「のざらし野晒、ひざらし日晒」
           -さらぶ(曝らぶ)-さらばふ-さらばへる「おyiさらばふ老曝」
                    -さらぼす
                    -さらぼふ「やせさらぼふ痩曝」
           -さらむ(晒らむ)
           -される(曝れる)「されかうべ/しゃれこうべ髑髏」
し( )-しる(白る)-しらく(白らく)-しらかす
                    -しらける
           -しらぐ(白らぐ)-しらがふ
                    -しらげる
           -しらぶ(白らぶ)-しらべる-しらべらる-しらべられる(調べる)
           -しらむ(白らむ)-しらまく-しらまかす
                    -しらます
           -しるす(記るす)-しるさる-しるされる
           -しろむ(白ろむ)「つきしろむ搗白」
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さ( )-さる(浚る)-さらふ(浚らふ)-さらへる(攫ふ)
す( )-する(擦る)-すらす(擦らす)-すらせる《するする》
           -すらる(擦らる)-すられる
           -すれる(擦れる)
ず( )-ずる(擦る)-ずらす《ずるずる》
            ずれる
そ( )-そる(剃る)-そらす(剃らす)-そらせる
           -そらる(剃らる)-そられる

カ接:かさらふ/かっさらふ
カ接:かする
コ接:こする
サ接:さする
ナ接:なする
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さ( )-さる(戯る)-される(戯れる)(しゃれる)
ざ( )-ざる(戯る)-ざれる(戯れる)(じゃれる)
--------------------
さ( )-さる(去る)-さらす(去らす)-さらせる「さりく去来、さりゆく去行、ありさる在去」
           -さらふ(去らふ)「よこさらふ横去」

シ接:しさる(し下+さる去)
ス接:すさる(す +さる去)「あとずさり」
--------------------<ししし>
し( )-しく(湿く)-しける(湿ける)《しくしく/じくじく》
    -しつ(湑つ)-したむ(湑たむ)
    -しと(霑 )-しとつ(霑とつ)《しとしと-しっとり/じとじと-じっとり》
           -しとむ(霑とむ)
           -しとる(霑とる)
    -しほ(潮 )-しほつ(潮ほつ)(塩*潮)《しほしほ》
           -しほる(霑ほる)
    -しむ(染む)-します(染ます)-しませる「しみいる沁入、しみこむ染込、しめころも染衣」
           -しみる(染みる)《しみしみ》
           -しめす(湿めす)
           -しめる(湿める)-しめらす-しめらせる《しめしめ/じめじめ》
                    -しめらふ
そ( )-そほ(霑 )-そほつ(霑ほつ)《そほそほ、しょぼしょぼ-しょんぼり》
           -そぼつ(霑ぼつ)
           -そほる(霑ほる)
    -そむ(染む)-そます(染ます)「いろどりそむ」
           -そまる(染まる)
           -そめる(染める)-そめらる-そめられる
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し( )-しく(頻く)-しきる(頻きる)「しきまき頻蒔」(「重く-重きる」)
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     した(  )-したふ(慕たふ)-したはる-したはれる「いしたふや」
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し(下)-しつ(滴つ)-したつ(滴たつ)-したたる
           -したづ(滴たづ)
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     しな(撓な)-しなふ(撓なふ)「しなひ竹刀」《しなしな》
           -しなゆ(撓なゆ)
           -しなる(撓なる)
           -しなwu(撓なwu)
--------------------
し( )-しぬ(偲ぬ)-しぬふ(偲ぬふ)
           -しのふ(偲のふ)「しのひこと偲言*誄(誄詞)、くにしのひうた国思歌」
           -しのぶ(偲のぶ)
--------------------
し(癈)-しふ(癈ふ)-しひる(癈ひる)「あきしひ精盲、めしひ目癈、みみしひ耳癈」「しひれめ癈目」
           -しふる(癈ふる)
    -しる(痴る)-しらす(痴らす)
           -しらふ(痴らふ)「おyiしらふ老痴」
           -しれる(痴れる)「ゑひしれる酔痴」
--------------------
し( )-しふ(強ふ)-しひる(強ひる)-しひらる-しひられる
--------------------
し( )-しふ(誣ふ)-しひる〔事実を曲げて言う、つくりごとを言う〕
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し( )-しる(為る)-しらふ(為らふ)「心しらふ、恥しらふ」
           -しろぐ(為らぐ)「たじろぐ、たちしろぐ、まじろぐ、みじろぐ」
す( )-する(為る)
せ( )-せす(為す)「神さびせす、旅宿りせす、よばひせす」

ア接:あしらふ
コ接:こしらふ
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し( )-しわ(皺 )-しわむ(萎わむ)《しわしわ》
    -しを(萎 )-しをる(萎をる)-しをれる《しをしを》
--------------------<すすす>
す( )-すく(好く)
--------------------
す( )-すく(食く)
    -すふ(吸ふ)-すはす(吸はす)-すはせる(吸はせる)-すはせらる-すはせられる
           -すはる(吸はる)-すはれる(吸はれる)
    -する(吸る)=すする(啜する)
--------------------
す( )-すく(結く)〔網を編む〕「あみすき網結」
--------------------
す( )-すく(救く)-すくふ(救くふ)-すくはる-すくはれる
           -すける(助ける)

タ接:たすく(助く)-たすかる
          -たすける-たすけらる-たすけられる
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す(簀)-すく(漉く)「紙漉き」〔「す簀」で紙の繊維を掬う〕
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す( )-すく(空く)-すかす(空かす)-すかせる「す鬆、す簀、すき隙、すき鋤」
           -すかふ(透かふ)
           -すける(透ける)
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す(酢)-すく(酸く)「す酢」「すし(酸シ)」
    -すふ(饐ふ)-すへる(饐へる)「すへりくさし(饐へり臭し)」
    -すゆ(饐ゆ)-すゆる(饐ゆる)「すゆりくさる」
           -すyeる(饐yeる)
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     すく(少く)-すくむ(竦くむ)-すくばる〔「(這ひ)つくばる」とは別語〕
                    -すくます-すくませる
                    -すくまる
                    -すくめる

 「すくなし」は、「すこし(少シ)」と(sk)縁語であり、”少し(すく)”がいっぱいの意。
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す( )-すぐ(過ぐ)-すぎる(過ぎる)
           -すぐす(過ぐす)
           -すぐる(過ぐる)-すぐれる(優る-優れる)
           -すごす(過ごす)-すごさす-すごさせる「すごし凄シ」
                    -すごさる-すごされる
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す( )-すぐ(挿ぐ)-すげる(挿げる)
--------------------
す( )-すす(煤す)-すすく(煤すく)-すすける「す煤/すす煤」
           -すすぶ(煤すぶ)
    -すむ(煤む)「すみ炭、すみ墨」
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す( )-すぬ(拗ぬ)-すねぶ(拗ねぶ)
           -すねる(拗ねる)
そ( )-そぬ(嫉ぬ)-そねむ(嫉ねむ)-そねまる-そねまれる
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     すべ(  )-すべす(滑べす)《すべすべ》
           -すべる(滑べる)
     そべ(  )-そべる「寝そべる」
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す( )-すむ(済む)-すます(済ます)-すませる
--------------------
す( )-すむ(澄む)-すます(澄ます)-すませる
--------------------
す( )-すむ(住む)-すます(住ます)-すませる
           -すまふ(住まふ)「すまひ住」
           -すめる(住める)
--------------------
す(酢)-すゆ(酢ゆ)-すyeる(饐える)
--------------------<せせせ>
せ( )-せく(急く)-せかす(急かす)-せかさる-さかされる
                    -せかせる
           -せかる(急かる)
--------------------
せ( )-せぐ(責ぐ)-せがむ(責がむ)
    -せつ(責つ)-せたぐ(責たぐ)-せたげる
           -せたむ(責たむ)
--------------------<そそそ>
そ-そく(退く)-そける(退ける)「そきたつ退立、しりぞく尻退」
 -そぐ(削ぐ)-そがる(削がる)-そがれる
        -そげる(削げる)

ノ接:のぞく(除く)-のぞかす-のぞかせる
          -のぞかる-のぞかれる
--------------------
そ( )-そぐ(似合)-そぐふ(似合ふ)
    -そぬ(具ぬ)-そなふ(具なふ)-そなはす(備はす)
                    -そなはる
                    -そなへる-そなへらる-そなへられる
           -そなる(具なる)
           -そだる(具だる)-そだれる(曾太礼)(n-d相通形)
    -そふ(添ふ)-そはす(添はす)-そはせる-そはせらる
           -そへる(添へる)-そへらる-そへられる
           -そほる(添ほる)
    -そる(揃る)-そろふ(揃ろふ)-そろはす-そろはせる
                    -そろへる-そろへらる-そろへられる

コ接:こぞる挙
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そ( )-そす(誹す)-そしる(誹しる)
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そ( )-そす(過す)「いひそす(言ひ過す)、みそす(見過す)」
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そ( )-そぶ(戯ぶ)-そばふ(戯ばふ)
           -そばゆ(戯ばゆ)
           -そぼる(戯ぼる)

ア接:あそぶ遊-あそばす-あそばせる「あそびべ遊部、とりのあそび、のあそび野遊」
       -あそばる-あそばれる
イ接:いそばふ(戯ふ)
オ接:おそばふ(戯ふ)
--------------------
そ( )-そぶ(聳ぶ)-そびく(聳びく)
           -そびゆ(聳びゆ)-そびやく-そびやかす
                    -そびyeる「そびyeあがる(聳上)」
    -そる(隆る)=そそる(隆そる)「そそりたつ、あまそそる天隆」
--------------------
そ( )-そむ(初む)-そめる(初める)
--------------------
そ( )-そる(反る)-そらす(反らす)-そらせる
    -そる(逸る)-そらす(逸らす)-そらせる-そらせらる-そらせられる
           -それる(逸れる)

 木の板が乾燥して”反り”かえるのも、矢が的から”逸れる”のも同じことと見ておく。
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動詞図(2)か行動詞

--------------------<かかか>
か(気)-かぐ(嗅ぐ)-かがす(嗅がす)-かがせる-かがせらる-かがせられる
           -かがふ(香がふ)
           -かがる(香がる)-かがれる
    -かwu(香wu)-かをる(香をる)
き(気)-きる(霧る)-きらす(霧らす)「あまぎらす天霧、うちきらす打霧、かききらす掻霧」
           -きらふ(霧らふ)「あまぎらふ天霧、たなぎらふ棚霧、みなきらふ水霧」
く(気)
け(気)「けはひ気這*気生、ひとけ人気」
こ(気)「こり香」

イ接:いく(生く)-いかす(生かす)-いかせる-いかせらる-いかせられる「いき息、いけす生簀」
         -いきむ(息きむ)
         -いきる(生きる)〔息をする〕
         -いける(生ける)
         -いこぬ(憩こぬ)-いこのふ
         -いこふ(憩こふ)
--------------------
か( )-かく(駆く)-かけす(駆けす)-かけさす-かけさせる
           -かける(駆ける)-かけらふ「(空を)かける翔」
    -かつ(徒つ)「かちゆく/かしゆく、かちさむらひ、おかちまち御徒町」
    -かる(駆る)〔馬を走らせる〕
き( )-きす(来す)-きさす(来さす)「きさる来去、きしく来及*来頻、きふ来経」
く( )-くゆ(来ゆ)
    -くる(来る)
    -くwu(蹴wu)-くゑる(蹴ゑる)「くゑはららかす蹴散」
け( )-ける(蹴る)「けちらす蹴散」
こ( )-こす(来す)-こさす(来さす)-こさせる(来す)
    -こす(越す)-こさる(越さる)-こされる
    -こゆ(越ゆ)-こyeる(越yeる)「ふしこye伏越」(「くゆ」の形も、東国形?)
    -こる(来る)-こらる(来らる)-こられる
    -こwu(越wu)-こゑる(越ゑる)「あごゑ(踞/足蹴)」
--------------------
か(掛)-かく(掛く)=かかぐ(掲かぐ)-かかげる-かかげらる-かかげられる(舁く)
           -かかす(掛かす)
           -かかふ(抱かふ)-かかはる
                    -かかへる-かかへらる-かかへられる
           -かかる(掛かる)-かからふ(「罹患する」意も)「かからはし」
           -かける(掛ける)-かけらる-かけられる(「賭ける」意も)
    -かす(架す)
    -かつ(担つ)-かつぐ(担つぐ)-かつがす-かつがせる「かた肩」
                    -かつがる-かつがれる
    -かる(絡る)=かがる(縢がる)
           -からぐ(絡らぐ)-からがる「こんがらがる」
                    -からげる「(着物の裾を)からげる」
           -からぶ(絡らぶ)
           -からむ(絡らむ)-からます-からませる
                    -からまる-からまれる
                    -からめる-からめらる-からめられる

シ接:しがらむ「しがらみ柵」
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か( )-かく(掻く)-かかす(掻かす)-かかせる〔(背中を)掻く、ひっかく〕「かきとる掻取」
           -かかる(掻かる)-かかれる
か( )-かく(櫂く)「かき/かい櫂」
こ( )-こく(扱く)-こきる(扱きる)「yiねこき稲扱、こきばし扱箸」
こ( )-こぐ(漕ぐ)-こがす(漕がす)-こがせる

ア接:あがく(足掻く)
シ接:しごく(扱ごく)-しごかる-しごかれる
ミ接:みがく(磨がく)-みがかす-みがかせる
           -みがかる-みがかれる
モ接:もがく(踠がく)
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か(欠)-かく(欠く)-かかす(欠かす)
           -かくす(隠くす)-かくさす-かくさせる
                    -かくさふ
                    -かくさる-かくされる
           -かくふ(囲くふ)
           -かくむ(囲くむ)-かくまふ-かくまはる-かくまはれる
           -かくる(隠くる)-かくらふ「かくらひかぬ」
                    -かくれる
                    -かくろふ
           -かける(欠ける)
           -かこふ(囲こふ)-かこはす-かこはせる
                    -かこはる-かこはれる
           -かこむ(囲こむ)-かこます-かこませる
                    -かこまる-かこまれる
き(消)-きゆ(消ゆ)-きyeる(消yeる)「きyewuす/けwuす(消失)、きyeのこる(消残*削遺)」
    -きる(消る)
く(消)-くる(消る)「立山の雪しクらしも」(m4024)
け(消)-けす(消す)-けさす(消さす)-けさせる「けやすし消安、ゆきげ雪消」「けのこる消残、けwuす消失」
           -けさる(消さる)-けされる
    -けつ(消つ)
    -ける(消る)「たまげる魂消」
--------------------
か( )-かぐ(輝ぐ)-かがす(輝がす)「かげ輝*影」
           -かがゆ(輝がゆ)-かがやく-かがやかす-かがやかせる
                    -かがよふ
           -かがる(輝がる)「かがり火」
           -かぎる(輝ぎる)-かぎろふ「たまかぎる、かぎろひ」
           -かぐる(輝ぐる)
           -かげる(輝げる)-かげらす-かげらせる「ひかげるみや日輝宮」
                    -かげろふ
--------------------
か( )-かさ(かさ)「かさ瘡、かす滓/粕」
    -かた(穢陋)「かたなし(汚シ)」
き( )-きた(汚穢)「きたなし(汚シ)」
く( )-くす(腐す)-くさす(臭さす)-くささる-くさされる「くさ瘡、くさし臭、くそ屎*糞」
           -くさむ(臭さむ)
           -くさる(腐さる)-くさらす-くさらせる(t-s相通形)
    -くせ(癖 )-くせむ(臭せむ)「くせもの曲者」
    -くつ(朽つ)-くたす(朽たす)「しほくつ塩朽、言い朽す、くたかけ朽鶏、wuのはなくたし卯花腐」
           -くたつ(朽たつ)「あかときくたち暁降、ひくたち日降、もちくたち望降、よくたち夜降」
           -くたる(朽たる)-くたれる「ねくたる寝腐、みくたる身腐」
           -くちる(朽ちる)
           -くだす(下だす)-くださる-くだされる(下痢)
           -くだる(下だる)
--------------------
     かさ(嵩さ)-かさぬ(重さぬ)-かさなる
                    -かさねる-かさねらる-かさねられる
           -かさぶ(嵩さぶ)-かさばる-かさばらす-かさばらせる
           -かさむ(嵩さむ)
--------------------
     かざ(翳ざ)-かざす(翳ざす)-かざさる-かざされる「かざしあふぎ翳扇」
           -かざる(飾ざる)-かざらふ「かざりたち飾太刀」
                    -かざらる-かざられる
--------------------
     かし(呪詛)-かしふ(呪詛ふ)
           -かしる(呪詛る)
--------------------
     かし(傾し)-かしく(畏しく)-かしこむ(畏しこむ)-かしこまる「かしこし畏」
           -かしぐ(傾しぐ)-かしげる(傾しげる)
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か( )-かす(貸す)
    -かふ(交ふ)=かがふ「かがひ嬥歌」
           -かはす(交はす)-かはさす-かはさせる
                    -かはさる-かはされる
           -かはる(代はる)-かはらす-かはらせる
           -かへす(返へす)-かへさふ「たかへす/たがやす田返*耕」「くつがへす」
                    -かへさる-かへされる「ひるかへす翻」
           -かへる(返へる)-かへらす-かへらせる(帰る)「ひるかへる翻、くつがへる」
                    -かへらふ「かへりみる-かへらひみる」
    -かゆ(換ゆ)-かyeる(換yeる)
    -かる(借る)-かりる(借りる)
く( )-くふ(交ふ)-くはす(交はす)「でくはす(出交す)」
           -くはふ(交はふ)「まぐはふ(ま交ふ)」
           -くはる(交はる)「まぐはる」

ア接:あかふ/あがふ贖(異形:あがなふ)
タ接:たがふ違(た+かふ交)-たがへる「たがひ(互ひ)」
チ接:ちがふ違(ち+かふ交)-ちがへる「ちがひ(違ひ)」
チ接:ちかふ誓(ち+かふ交)-ちかはす-ちかはせる
マ接:まぐはふ「まぐはひ(交合)」
   まぐはる

ア接(交換・交替する意の渡り語「か/き/こ」のア接語):
あか-あかなふ/あがなふ(贖ふ)(物を買う、金品と罪を交換する)
あき-あきさす(贉す)(前金を払って買う)
  -あきなふ(商ふ)「あきひと商客/商人、あきじこり」
おき-おきなふ/おぎなふ(補ふ)
  -おきのる(賖る)(掛け、後払いで買う)
おこ-おこなふ(行ふ)
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か( )-かす(淅す)-かしく(炊しく)「かしみづ淅水、かしよね淅米」
           -かしぐ(炊しぐ)
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か( )-かす(和す)
    -かつ(合つ)〔合わせる〕「"かて"て加へて」
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か( )-かす(憔悴)-かしく(悴しく)-かしかむ「かしけゆく〔痩せこける〕」
                    -かしける
           -かせる(悴せる)「かせくび悴首、かせさむらひ悴侍、かせやまひ悴病」
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か( )-かす(幽す)-かすむ(霞すむ)-かすめる「かすか幽、かすむ霞~かすみ霞」《かすかす》
           -かする(掠する)
           -かすwu(掠すwu)-かすゐる(掠ゐる)
           -かそぶ(掠そぶ)「かそけし」
く( )-くす(掠す)-くすぬ(掠すぬ)-くすねる《くすくす》
           -くすむ(掠すむ)「くすみ」
こ( )-               《こそこそ》
--------------------
か(離)-かす(離す)
    -かゆ(離ゆ)
    -かる(離る)-からす(離らす)
           -かれる(離れる)

ア接:あかる
サ接:さかる「とほさかる(遠ざかる)」
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     かず(数 )-かずふ(数ずふ)
           -かずむ(数ずむ)-かずまふ
           -かぞふ(数ぞふ)-かぞへる
     きず(傷 )
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か( )-かた(堅た)-かたす(固たす)「かた型/形、かつを鰹〔かた堅+を魚〕、かたし(堅シ)」
           -かたぬ(固たぬ)
           -かたむ(固たむ)-かたまる-かたまらす-かたまらせる
                    -かたむる
                    -かためる-かためらる-かためられる
き( )-きた(鍛た)-きたす(鍛たす)
           -きたふ(鍛たふ)-きたへる-きたへらる-きたへられる
           -きたむ(鍛たむ)-きたます〔懲らしめる〕「うちきたむ打鍛」
    -きつ(緊つ)「きつし(緊シ)」
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か( )-かつ(搗つ)〔臼でつく〕
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か( )-かつ(勝つ)-かたす(勝たす)-かたせる「おもかつ面勝、まかつ目勝」
           -かてる(勝てる)
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か( )-かつ(語つ)-かたる(語たる)-かたらす-かたらせる「かむがたり神語、しひがたり強語」
                    -かたらふ
く( )-くつ(口つ)「くち口」
こ( )-こつ(託つ)=こごつ(小言つ)「こと言、こごと小言」
           -こたふ(答たふ)-こたへる
           -こたゆ(答たゆ)-こたyeる
           -こつる
    -ごつ(言つ)「のりごつ(令*宣)」

カ接:かこつ喞*詫
シ接:しこづ譖-しこづる〔讒言(ざんげん)する、そしる〕

 日国「かたる」の語源説欄に「カタはコト(言)の転。リは活用語尾〔日本古語大辞典=松岡静雄〕」が見え、これに従う。「かたる」と「こと言」を(kt)縁語と見る。
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か( )-かづ(  )-かづす(   )(m3432)
き( )-きづ(刻づ)-きだむ(段だむ)(「きざむ刻」は「きだむ」の(d-z)相通語か)「きだ段」
く( )-くつ(  )-くたつ(降たつ)
    -くづ(砕づ)-くだく(砕だく)-くだかす-くだかせる
                    -くだかる-くだかれる「くづ屑、おがくづ、のこくづ鋸屑」
                    -くだける
           -くだす(下だす)-くださる-くだされる
           -くだつ(降だつ)
           -くだる(下だる)
           -くづす(崩づす)-くづさる-くづされる
           -くづふ(崩づふ)-くづほる-くづほれる
           -くづる(崩づる)-くづれる
け(削)-けづ(削づ)-けづる(削づる)-けづらる-けづられる「ゆげ弓削、けづりかけ」
こ( )-こづ(傾頽)-こだる(傾頽る)「ゑみこだる笑興、をれこだる折傾」
           -こづむ(偏づむ)
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か( )-かづ(潜づ)-かづく(潜づく)(「(着物を)かぶる」か)
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     かど(誘 )-かだふ(奸だふ)-かだはむ
           -かだむ(奸だむ)(心がねぢけている、悪事をたくらむ)
           -かづす(誘づす)(未詳。誘う、かどわかすの意か)「かづさかづとも、かづさねも」
           -かどふ(誘どふ)-かどはく-かどはかす
                    -かどはす(拘引する)
           -かどむ(廉どむ)-かどめく(詮索する)
           -かどる(制どる)(統御する、管轄する)
          (-こだふ)    -こだはる(拘る-拘泥する)
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か(屈)-かぬ(屈ぬ)=かがぬ(屈がぬ)-かがなふ(屈なふ/僂なふ)
    -かふ(屈ふ)=かがふ(屈がふ)-かがふる
    -かむ(屈む)=かがむ(屈がむ)-かがまふ
                    -かがまる「ちぢかむ/しじかむ-ちぢかまる/しじかまる」
                    -かがむる(これが「かうむる(蒙る)」に転じたか)
                    -かがめる
           -かまる(屈まる)「わだかまる;かまりものみ斥候、すてかまり捨屈、ふせかまり臥屈」
           -かむる(冠むる)-かむらす-かむらせる
           -かぶる(冠ぶる)-かぶらす-かぶらせる
く(屈)-くく(潜く)-くくす(屈くす)
    -くす(屈す)=くぐす(屈ぐす)「うちくす打屈」「くぐせ屈背/傴僂」
    -くつ(屈つ)=くぐつ(屈ぐつ)「くぐつ傀儡」
    -くむ(屈む)=くぐむ(屈ぐむ)-くぐまる「くま隈、くみど、くむしら隩区、せくぐまる背屈」
                    -くぐめる
                    -くぐもる
           -くまる(屈まる)「wuずくまる/wuづくまる」
           -くもる(隠もる)-くもらふ
    -くる(屈る)=くぐる(潜ぐる)-くぐらす-くぐらせる
こ(屈)-こぐ(屈ぐ)-こがす(凍がす)-こがせる?
           -こぎゆ(凍ぎゆ)-こぎyeる?
    -こす(凝す)=こごす(凝ごす)(凍ごす)「こし濃シ、にこす煮凍/煮凝」「岩が根のこごしき山に」
    -こぬ(屈ぬ)=こごぬ(屈ごぬ)-こごなる(跼る)「こごなりかがむ跼屈」
    -こふ(氷ふ)=こごふ(凍ごふ)-こごへる
           -こほる(氷ほる)-こほらす-こほらせる「こほり氷」
    -こぶ(凝ぶ)「こぶ瘤」
    -こむ(籠む)=こごむ(籠ごむ)-こごまる「こも薦」
                    -こごめる
           -こまる(籠まる)-こまらす-こまらせる(困る-困らす-困らせる)
           -こめる(籠める)-こめらる-こめられる
           -こもる(籠もる)-こもらす-こもらせる「よごもり夜隠」
                    -こもらふ「こもりく隠国、こもりづ/こもりど隠処、こもりぬ隠沼」
    -こゆ(凍ゆ)=こごゆ(凍ごゆ)-こごyeる
           -こやす(凍やす)「にこやし煮凍」
           -こやる(凍やる)
           -こよす(凍よす)
    -こる(凝る)=こごる(凝ごる)-こごらす-こごらせる「こし濃シ、にこごり煮凝」
           -こらす(凝らす)-こらせる
           -こらふ(凝らふ)-こらへる
           -ころす(凝ろす)
           -ころふ(凝ろふ)「ひころふ孛/火凝」
           -ころる(凝ろる)
    -こwu(臥wu)

ア接:あがむ(崇む)-あがまる〔本来「わがむ」か。「をがむ」に同じ。〕
          -あがめる-あがめらる-あがめられる
サ接:さがむ(しゃがむ)
シ接:しかむ(顰む)-しかめる
   しこる(凝る)「しこり痼」
ス接:すくぶ(竦ぶ)-すくばる
   すくむ(竦む)-すくます-すくませる
          -すくまる
          -すくめる
ハ接:はくくむ(育む)
ヘ接:へこむ(凹む)-へこます-へこませる
ヲ接:をがむ(拝む)-をがまる-をがまれる、〔「をろ+かむ」(拝む)の形も〕
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か( )-かぬ(叶ぬ)-かなふ(叶なふ)-かなへる-かなへらる-かなへられる
           -かなる(叶なる)
           -かねる(兼ねる)
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       (かぬ)-かなづ(奏なづ)-かなでる
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か( )-かふ(支ふ)=かかふ(抱かふ)-かかはる(飼ふ)
                    -かかへる-かかへらる-かかへられる

シタ接:したかふ(下支ふ)-したかはす-したかはせる-したかはせらる-したかはせられる(従ふ)
             -したかへる-したかへらる-したかへられる
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か( )-かふ(躱ふ)-かはす「(身を)躱はす」「さしかふ」
           -かへす「(身を)ひる”かへす”翻」
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か( )-かふ(肯ふ)-かへす(肯へす)-かへずる(がえんずる)「うけがふ受肯」
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か( )-かぶ(構ぶ)-かばふ(庇ばふ)(「あばふ」「たばふ」の形もあるが不詳)
    -かむ(構む)-かまく(感まく)-かまける
           -かます(構ます)-かませる(突如異論を提示するといった「一発”かます”」)
           -かまふ(構まふ)-かまはる-かまはれる
                    -かまへる「みがまへる身構」(虺)
           -かむく(感むく)-かむかふ-かむかへる「かむく-かむかふ-かんがへる考」
く( )-くふ(組ふ)「すくふ巣構」
    -くぶ(組ぶ)-くばす(配ばす)-くばせる「めくばせ目配」
           -くばる(配ばる)-くばらす-くばらせる「みくばり/みくまり水配」
                    -くばらる-くばられる
    -くむ(組む)-くます(組ます)-くませる-くませらる-くませられる「めぐむ目組/恵」
           -くまふ(組まふ)
           -くまる(組まる)-くまれる「みくまり水配」
           -くみす(組みす)
    -くる(組る)-くらぶ(比らぶ)-くらべる-くらべらる-くらべられる
           -くらむ(比らむ)

ア接:あぐぬ倦-あぐねる
   あぐむ倦
タ接:たくらむ企
メ接:めぐむ恵(め+くむ配)-めぐまる-めぐまれる(「目を配る、目配りする」意)
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     かぶ(頭ぶ)-かぶく(傾ぶく)-かぶける
           -かぶす(傾ぶす)-かぶさす-かぶさせる「wuなかぶす頸傾」
                    -かぶさる-かぶされる
                    -かぶせる-かぶせらる-かぶせられる
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か( )-かぶ(黴ぶ)-かびる(黴びる)「かび黴」
           -かぶる(黴ぶる)-かぶれる「〔漆に〕気触れる」
           -かぼす(黴ぼす)
    -かむ(噛む)-かます(噛ます)-かませる
           -かまる(噛まる)-かまれる
           -かもす(醸もす)
           -かぶる(噛ぶる)「(劇場の)かぶりつき」
    -はむ(歯む)(「かむ」は「はむ」の (k-h)相通形か)

イ接:いがむ啀「いがみあふ啀合」
シ接:しがむ
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か( )-かむ(擤む)「(鼻/洟を)かむ」
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か(着)-かる(着る)
き(着)-きす(着す)-きさす(着さす)-きさせる「きほし着欲、きもの着物」
           -きせす(着せす)
           -きせる(着せる)-きせらる-きせられる
           -きそふ(着そふ)
    -きる(着る)-きらる(着らる)-きられる
           -きれる(着れる)
く(着)-
け(着)-けす(着す)「みけし御着」
    -ける(着る)
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か(刈)-かる(刈る)-からす-からせる(狩る)
           -からる-かられる
き(切)-きる(切る)-きらす(切らす)-きらせる
           -きらふ(切らふ)-きらはる(嫌らふ)
           -きらる(切らる)-きられる
           -きれる(切れる)
く(刳)-くる(刳る)-くらる(刳らる)-くられる「くりぬく刳抜」
こ(樵)-こる(樵る)「きこり木樵」

カ接:かぎる(カ切)-かぎらる-かぎられる(限る)
ク接:くぎる(区切)-くぎらる-くぎられる
シ接:しきる(仕切)
チ接:ちぎる(千切)-ちぎれる-ちぎられる
ト接:とぎる(ト切)-とぎれる
ニ接:にぎる(ニ切)(「に切りとる」意があったか)
ミ接:みきる(見切)
ヨ接:よぎる(横切)
サ接:さくる(サ刳)
ヱ接:ゑぐる(ヱ刳)-ゑぐらる-ゑぐられる〔ゑ彫+くる刳〕
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か( )-かる(枯る)-からす(枯らす)-からせる「かるし/かろし軽シ」《からから》
           -からぶ(枯らぶ)-からびる「ひからびる干乾*干涸」
           -かるぶ(軽るぶ)
           -かれる(枯れる)(涸れる)
           -かろぶ(軽ろぶ)
           -かろむ(軽ろむ)
    -かる(涸る)-かれる(涸れる)
    -かる(嗄る)-かれる(嗄れる)「しはがる-しはがれる/しゃがれる」

ス接:すがる末枯
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か( )-かわ(渇 )-かわく(渇わく)-かわかす〔喉が渇く、「かわ」の声を絞り出す〕
--------------------<ききき>
き( )-きく(聞く)-きかす(聞かす)-きかせる-きかせらる-きかせられる
           -きかゆ(聞かゆ)
           -きかる(聞かる)-きかれる
           -きこす(聞こす)「きこしめす、きこしをす」
           -きこゆ(聞こゆ)-きこyeる
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き( )-きく(利く)-きかす(利かす)-きかせる(効く)
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     きし(軋し)-きしむ(軋しむ)-きします-きしませる《きしきし/ぎしぎし》
                    -きしめく
           -きしる(軋しる)-きしろふ「歯ぎしり」
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き( )-きす(  )-きそふ(競そふ)-きそはす-きそはせる(新撰字鏡、11世紀仏典、太平記)
    -きふ(  )-きほふ(競ほふ)-きほはす-きほはせる(万葉集、9世紀仏典、源氏物語)
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            きたむ(罰たむ)-きたます
---------------
き(極)-きふ(極ふ)-きはむ(極はむ)-きはまる「きは際、きはみ極、きへ寸戸」
                    -きはめる
           -きはる(極はる)「たまきはる玉、としきはる年」
    -きむ(決む)-きまる(決まる)「きめつく」
           -きめる(決める)-きめらる-きめられる
    -きる(極る)「きり限」
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     きよ(清よ)-きよむ(清よむ)-きよまふ-きよまはる「きよし清シ」
                    -きよまる
                    -きよめる
     けや(尤や)「けやけし」
     こよ(清よ)「こよなし」
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き( )-きる(鑚る)「(火)きり、ひきりうす火鑚臼、ひきりきね火鑚杵」《きりきり》
    -きる(錐る)「きり鑚*錐」
--------------------くくく
く( )-くく(括く)-くくす(括くす)
           -くくむ(包くむ)-くくまる
                    -くくもる「羽ぐくむ-羽ぐくもる」
           -くくる(括くる)-くくらる-くくられる
           -くける(絎ける)
ふ( )-ふく(括く)-ふくむ(含くむ)-ふくまる-ふくまれる(一度目の(h-k相通形))
                    -ふくめる
    -ふふ(括く)-ふふむ(含ふむ)(二度目の(h-k相通形))
           -ほほむ(   )-ほほまる〔蕾がふくらむ〕
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く( )-くく(潜く)-くくる(潜くる)-くくらす-くくらせる「(百舌鳥の)くさくき草潜、とびくく飛漏」
                    -くくらる-くくられる

コ接:こく(漏く)
モ接:もく(漏く)-もぐる(潜ぐる)-もぐる-もぐらす-もぐらせる
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く(黒)-くす(黒す)-くすむ(黒すむ)-くすます-くすませる
    -くむ(黒む)-くもる(曇もる)-くもらす-くもらせる「くも雲」
    -くる(暗る)-くらす(暮らす)-くらさす-くらさせる「くら暗/くり涅/くれ暮/くろ黒」
           -くらむ(暗らむ)-くらます
           -くれる(暮れる)
           -くろむ(黒ろむ)(黒くなる)
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く(奇)-くす(奇す)-くすす(奇すす)「くすし薬師」「くし/くすし(奇シ)」
           -くする(奇する)「くすり薬」
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く( )-くず(挫ず)-くじく(挫じく)-くじかす
                    -くじける
こ( )-こず(拗ず)-こじる(拗じる)-こじらす-こじらせる
                    -こじれる(拗れる)

シ接:しくじる
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く( )-くず(抉ず)-くじる(抉じる)「くじりゑる抉彫」
こ( )-こず(抉ず)-こじる(抉じる)
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                  くた-くたばる《くたくた》
                    -くたびる-くたびれる「草臥れる」
                    -くたぶる
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く(口)-くつ(口つ)「く/くち口」
    -くふ(食ふ)-くはす(食はす)-くはせる-くはせらる-くはせられる
           -くはふ(咥はふ)-くははる-くははらす-くははらせる(加はる)
                    -くはへる-くはへらる-くはへられる(咥へる・加へる)
           -くはる(食はる)-くはれる
    -くる(食る)-くらふ(喰らふ)-くらはす-くらはせる「くらひもの食物、よきくらひもの」

タ接:たくはふ(蓄ふ)-たくはへる
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     くび(首 )-くびる(縊びる)-くびらる
                    -くびれる
     くぼ(窪 )-くぼむ(窪ぼむ)-くぼます-くぼませる
                    -くぼまる
                    -くぼめる
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く( )-くむ(汲む)-くます(汲ます)-くませる
--------------------
く( )-くむ(銜む)-くくむ(銜くむ)-くくもる〔口に含む〕
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く( )-くゆ(崩ゆ)-くやす(崩やす)
           -くyeる(崩yeる)「くye崩、いはくye岩崩」
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く( )-くゆ(悔ゆ)-くやす(悔やす)-くやしぶ「くyi悔、くやし(悔シ)」《くよくよ》
           -くやむ(悔やむ)-くやまる-くやまれる
           -くyiる(悔yiる)
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く( )-くる(繰る)「くりあぐ繰上、くりさぐ繰下;つまぐる爪繰」

タ接:たぐる手繰
マ接:まくる捲
メ接:めくる捲
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く(転)-くる(転る)-くらむ(眩らむ)-くらます-くらませる(目が回る)
           -くるふ(狂るふ)-くるはす-くるはせる-くるはせらる-くるはせられる《くるくる》
                    -くるほす
           -くるぶ(転るぶ)-くるべく-くるべかす
           -くるむ(包るむ)-くるまる
                    -くるめく-くるめかす
                    -くるめる
           -くるる(転るる)「くるる枢」
           -くろむ(転ろむ)
こ(転)-こく(転く)-こかす(転かす)-こかさる-こかされる
           -こける(転ける)「ずっこける」
    -ころ(転ろ)-ころぐ(転ろぐ)-ころがす-ころがさる-ころがされる《ころころ》
                    -ころがる
                    -ころげる
           -ころぶ(転ろぶ)-ころばす-ころばせる
           -ころる(転ろる)
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く( )-くる(呉る)-くれる(呉れる)「くれてやる」
--------------------<けけけ>
     けが(穢 )-けがす(穢がす)-けがさる-けがされる「にごす、よごす」
           -けがる(穢がる)-けがれる
     こが(焦 )-こがす(焦がす)-こがさる-こがされる
           -こがる(焦がる)-こがれる
           -こげる(焦げる)
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け( )-けす(化す)-けさふ(化さふ)「けしょう化粧」
           -けする(化する)-けすらふ(つくろう/装う、めかす)
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     けし(  )-けしかく-けしかける「けし、けしけし」
--------------------<こここ>
こ( )-こく(扱く)「稲扱き」
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こ( )-こく(放く)「へこき屁放」
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こ( )-こく(痩く)-こける(痩ける)「やせこける痩、頬がこける」
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こ( )-こく(耽く)-こくる(耽くる)「だまりこくる、ぬりこくる、はりこくる」
           -こける(耽ける)「ねむりこける、わらひこける」
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こ( )-こぬ(  )-こなす(熟なす)-こなさる
           -こなる(熟なる)-こなれる
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    -こは(壊は)-こはす(壊はす)-こはさる -こはされる(中世末以降の語)
           -こはる(壊はる)-こはれる
    -こほ(壊ほ)-こほす(壊ほす)
           -こほつ(壊ほつ)(万1556、名義抄他)
           -こほる(壊ほる)(万2644、仁徳紀4年、名義抄他)
    -こば
    -こぼ(毀ぼ)-こぼす(毀ぼす)(竹取物語他)
           -こぼつ(毀ぼつ)-こぼたる(舒明紀10年、枕草子他)
           -こぼる(毀ぼる)-こぼれる(毀る)
 (コ接語)
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こ(乞)-こふ(乞ふ)-こはす(乞はす)「こじき乞食」
           -こはる(乞はる)-こはれる
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こ( )-こむ(浸む)(田が水浸しになる)
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こ( )-こゆ(肥ゆ)-こやす(肥やす)「こやし/こye肥」
           -こyeる(肥やす)
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こ( )-こゆ(臥ゆ)-こやす(臥やす)「こyiふす臥伏、こyiまろぶ臥転」
           -こやる(臥やる)
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こ( )-こる(懲る)-こらす(懲らす)-こらさる-こらされる
                    -こらしむ-こらしめる
           -こらる(嘖らる)
           -こりる(懲りる)
           -ころす(殺ろす)-ころさる-ころされる
           -ころふ(嘖ろふ)-ころほふ〔叱嘖する〕
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こ( )-こる(梱る)「こり梱」
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