2018年8月27日月曜日

動詞図(1)あ行動詞

--------------------<あああ>
あ(生)-あす(生す)
    -ある(生る)-あらす(有らす)-あらせる-あらせらる-あらせられる
           -あらふ(有らふ)-あらはす-あらはさす(現わす)「あらは露」
                         -あらはさる
                         -あらはせる
                    -あらはふ
                    -あらはる-あらはれる(現わる)
    -ある(新る)-あらく(新らく)
           -あらつ(新らつ)-あらたむ-あらたまる「あらたし新」
                         -あらためる-あらためらる-あらためられる
           -あらふ(新らふ)-あらはす-あらはせる(洗ふ)
                    -あらはる-あらはれる
    -ある(荒る)-あらく(荒らく)-あらかふ
                    -あらける
           -あらぐ(荒らぐ)-あらがふ
                    -あらげる
           -あらす(荒らす)-あらさる-あらされる
                    -あらそふ-あらそはす-あらそはせる(争ふ)
           -あらぶ(荒らぶ)-あらびる
                    -あらぶる
           -あれぶ(荒れぶ)
           -あれる(荒れる)
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あ(明)-あく(明く)-あかす(明かす)-あかさる-あかされる〔あ(赤)-あく(赤く)〕
           -あかぶ(赤かぶ)-あかばむ
           -あかむ(赤かむ)-あかめる
           -あかる(赤かる)-あからぶ
                    -あからむ-あからめる
                    -あかるむ
           -あきる(明きる)-あきらむ-あきらめる(諦らむ)
           -あける(明ける)
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あ( )-あく(飽く)-あかす(飽かす)-あかせる
           -あきる(飽きる)-あきらむ-あきらめる(諦らむ)
                    -あきらる-あきられる
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あ(上)-あぐ(上ぐ)-あがる(上がる)
           -あげる(挙げる)-あげらる-あげられる
    -あふ(仰ふ)-あふぐ(仰ふぐ)-あふがす-あふがせる「あふのく仰伸、あふむく仰向」
                    -あふがる-あふがれる
           -あふる(呷ふる)
う(上)-うく(浮く)-うかす(浮かす)-うかせる
           -うかぶ(浮かぶ)-うかばす-うかばせる
                    -うかばる-うかばれる
                    -うかべる-うかべらる-うかべられる
           -うかむ(浮かむ)
           -うかる(浮かる)-うかれる「うかれひと浮人/浮浪、うかれめ遊行女婦」
           -うくる(受くる)
           -うけふ(受けふ)
           -うける(受ける)
う(上)-うへ(上 )

 渡り語「あ/う」で上空、上部、上辺を表わしていると見られる。
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あ( )-あぐ(倦ぐ)-あぐぬ(倦ぐぬ)-あぐねる
           -あぐむ(倦ぐむ)
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あ( )-あす(浅す)-あさふ(浅さふ)「あさし(浅シ)」
           -あさむ(浅さむ)「あさまし」
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あ( )-あず(交ず)-あざぬ(糾ざぬ)-あざなふ-あざなはる「あぜくら校倉」
           -あざふ(糾ざふ)-あざはふ
                    -あざはる〔もつれあう/からみあう/交叉する〕
    -あず(戯ず)-あざる(戯ざる)〔取り乱し騒ぐ〕

 「まず(交ず)」の(m-&)相通形か。
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     あた(敵た)-あたく(敵たく)-あたける「あたし敵シ」
           -あたす(敵たす)
           -あたぬ(敵たぬ)-あたなふ「あたなふ寇」〔害をなす〕
           -あたふ(敵たふ)
           -あたむ(敵たむ)-あたまる
     あだ(仇だ)-あだく(仇だく)「あだし仇シ」
           -あだす(仇だす)(「ふみあだす」-踏んでばらばらにする)
           -あだふ(仇だふ)
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     あつ(熱つ)-あたつ(熱たつ)-あたたむ-あたたまる「あたたか暖、あたみ熱海」
                         -あたためる
           -あつく(熱つく)-あつかふ(悶熱)「あつし熱シ、あつし暑シ」
           -あつゆ(篤つゆ)
           -あつる(暑つる)
     いた(痛た)-いたむ(痛たむ)-いためる「いたし(痛シ)、いたまし(痛まシ)」
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     あは(淡 )-あはす(淡はす)「あはし(淡シ)」
           -あはつ(淡はつ)-あはたす
           -あはづ(淡はづ)〔淡くなる、浅薄になる、衰える〕
           -あはむ(淡はむ)
     さは(醂 )-さはす(醂はす)「さはし(淡シ)」(&-s相通形)
           -さはむ(醂はむ)
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あ( )-あふ(合ふ)-あはす(合はす)-あはさす
                    -あはさる-あはされる
                    -あはせる
           -あはふ(合はふ)「あはひ間」
           -あへす(合へす)
           -あへる(和へる)「和へ物/虀へ物」
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あ( )-あふ(饗ふ)「あへのこと」
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あ( )-あふ(敢ふ)「あへて(敢て)」
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     あむ(編む)-あます(編ます)-あませる「あみ網」
           -あまる(編まる)-あまれる

 「み(箕)」の渡り語で動詞形「む」のア接語か。日国「み箕」の項の語源説欄には「モ(裳)の転〔日本古語大辞典=松岡静雄〕」との説が見える。いずれも竹ひごや糸を”編ん”で作る。
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あ( )-あゆ(零ゆ)-あyeす(零yeす)「あyeか」
           -あyeる(零yeる)
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           -あやす(零やす)-あやしむ「あやし(怪シ)」
           -あやぶ(危やぶ)-あやぶむ「あやふし危ふシ」
           -あやむ(誤やむ)-あやまつ〔過誤〕
                    -あやまる(誤まる・謝まる)〔過誤・謝罪〕
                    -あやめる(誤める、危める、殺める〔殺人〕)

 「あゆ(零ゆ)」は木の実が熟して落ちたり、汗や血がしたたり落ちることを言うとされる。これと上記の不詳語の「怪しむ、過まつ、誤まる」などを結びつけることができないか。
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あ( )-あゆ(肖ゆ)-あやく(肖やく)-あやかる〔似る〕
           -あyeる(肖yeる)
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あ( )-ある(離る)-あらく(離らく)(散る-散らく)
           -あらつ(離らつ)
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あ( )-ある(足る)-ありく(歩りく)〔「足る」は残らなかった〕
           -あるく(歩るく)-あるかす-あるかせる
                    -あるける
           -さるく(歩るく)(&-s相通形)

 時系列「し-あし-あ(足)」の最後の「あ」時代の語。
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     あわ(泡 )-あわつ(慌わつ)-あわてる「あわたたし(慌シ)」
           -いわく〔驚き慌てる〕
--------------------<いいい>
い( )-いく(熱く)-いかる(怒かる)-いからす-いからせる
           -しかる(叱かる)-しからる-しかられる(&-s相通語)
           -いきむ(熱きむ)-いきまふ-いきまはる
           -いきる(熱きる)-いきれる
           -いくぶ(憤くぶ)
           -いくむ(憤くむ)「いくみうらむ」
           -いこる(熾こる)
    -いつ(酡つ)-いてる(酡てる)
    -いる(沃る)
    -いる(煎る)
    -いる(鋳る)
お( )-おく(熱く)-おこす(熾こす)
           -おこる(熾こる)

 「加熱する」「発熱する」意か。「瞋、怒、恚、憤、慍、懥、熾・・」
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     いす(  )-        -いすすく〔そわそわする、驚き騒ぐ〕
     いそ(  )-いそぐ(急そぐ)-いそがす-いそがせる「いそし、いそがし忙シ」《いそいそ》
                    -いそがる-いそがれる
           -いそす(勤そす)-いそしむ
           -いそふ(争そふ)
     うす(  )         -うすすく〔そわそわする、驚き騒ぐ〕
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     いざ(  )-いざす(誘ざす)
           -いざぬ(誘ざぬ)-いざなふ
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いた:いたつく(労つく)「いたつき労」
   いたはる(労はる)-いたはらる-いたはられる「いたはし労シ」「いたひけなし(幼気なし)」
いつ:いつく(傳助)~いつくしむ「いつきかしづく(斎傅/愛育)」
   いつふ-いつはる(偽る)
いと:   -いとしむ(愛しむ)「いとこ愛子」「いとし(愛シ)」
      -いとなむ(営む)
   いとふ(愛惜)~いとほしむ「いとほし(愛シ)
うつ:うつく(傳助)~うつくしむ「うつくし(美シ)」
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     いぢ(苛ぢ)-いぢく(苛ぢく)-いぢくる《いぢいぢ》
                    -いぢける
           -いぢむ(苛ぢむ)-いぢめる-いぢめらる-いぢめられる
           -いぢる(苛ぢる)-いぢらる-いぢられる「いぢらし」
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い( )-いつ(至つ)-いたす(至たす)「いただく頂~いただき、いなだく~いなだき」(t-n相通形)
           -いたる(至たる)-いたらす至-いたらしむ
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い( )-いつ(凍つ)-いてる(凍てる)
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い( )-いゆ(癒ゆ)-いやす(癒やす)-いやさる-いやされる
           -いyeる(癒yeる)
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     いら(苛ら)-いらす(苛らす)《いらいら》
           -いらつ(苛らつ)
           -いらふ(苛らふ)
           -いらる(苛らる)-いららぐ
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い( )-いる(要る)〔必要とする〕
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い( )-いる(入る)-いらす(入らす/貸らす)「いらしもの利息、いらしのいね貸稲、いらしのおほちから貸税」
           -いらふ(入らふ/借らふ)
           -いらる(入らる)「いりあひ入会」
           -いれる(入れる)-いれらる-いれられる

 母音語の常で不可解である。「い」が「入」の意味をもたなければならないが、イ段の一拍語のどれかの頭の子音が落ちたものと考えるほかない。「いる入」に限らないが、ほかの考え方を見つけたいものである。
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い( )-いる(沃る)〔水を注ぐ、浴びせる〕
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い( )-いる(鋳る)〔鋳造する〕
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い( )-いる(煎る)-いらる(煎らる)-いられる〔(豆を)あぶりこがす〕
--------------------<ううう>
う(埋)-うむ(埋む)-うまる(埋まる)
           -うめる(埋める)-うめらる-うめられる
           -うもる(埋もる)-うもれる「うもれき埋れ木」
    -うづ(埋づ)-うづむ(埋づむ)-うづまる
                    -うづめる-うづめらる-うづめられる
                    -うづもる-うづもれる
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う(得)-うる(得る)
え(得)-える(得る)-えらる(得らる)-えられる
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う( )-うる(売る)-うらす(売らす)-うらせる-うらせらる-うらせられる
           -うらる(売らる)-うられる
           -うれる(売れる)
--------------------<えええ>
--------------------<おおお>
お( )-おく(置く)-おかす(置かす)-おかせる-おかせらる-おかせられる
           -おかる(置かる)-おかれる
           -おきつ(掟きつ)「おきて掟」
           -おこつ(怠こつ)-おこたる
    -おす(押す)-おさす(押さす)-おさせる
           -おさふ(抑さふ)-おさへる-おさへらる-おさへられる
           -おさる(押さる)-おされる
           -おそふ(襲そふ)-おそはる-おそはれる
           -おそぶ(押そぶ)-おそぶる-おそぶらふ
    -おつ(落つ)-おちる(落ちる)「おとがひ頤/乙貝、おとひと弟人、おとひめ乙姫、おとむすめ妹娘」
           -おつる(落つる)
           -おとす(落とす)-おとさす-おとさせる
                    -おとさる-おとされる
                    -おとしむ-おとしめる-おとしめらる-おとしめられる「おとしむ貶」
           -おとる(劣とる)-おとろふ-おとろへる「おとろふ衰」
    -おふ(覆ふ)-おほふ(覆ほふ)-おほはす-おほはせる
                    -おほはる-おほはれる
    -おる(降る)-おりる(降りる)
           -おるる(降るる)
           -おろす(降ろす)-おろさす-おろさせる
                    -おろさる-おろされる

 オ接動詞群である。上から下へ力が及ぶ様をさまざまに言い分けている。「上から下へ」語群である。
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お(追)-おく(措く)-おくす(臆くす)
           -おくる(遅くる)-おくらす-おくらせる(遅る/送る)
                    -おくらる-おくられる
                    -おくれる
           -おこつ(怠こつ)-おこたる
                    -おこつく
                    -おこつる
           -おこす(遣こす)「言い遣す、思ひ遣す、見遣す」
           -おこる(遣こる)
    -おふ(追ふ)-おはす(追はす)-おはせる
           -おはふ(追はふ)
           -おはる(追はる)-おはれる

 「後ろから」語群である。
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お(怖)-おく(恐く)-おくす(臆くす)-おくする「おめずおくせず」
    -おす(恐す)-おさふ(押さふ)-おさへる-おさへらる-おさへられる
           -おさる(押さる)-おされる
           -おそふ(襲そふ)-おそはす-おそはせる
                    -おそはる-おそはれる
           -おそる(恐そる)-おそれる「おそろし恐ろシ」
    -おず(悍ず)-おぞむ(悍ぞむ)「おずし/おぞし悍シ」「おぞまし悍まシ」
    -おづ(怖づ)-おぢく(怖ぢく)-おぢける《おづおづ、おどおど》
           -おぢむ(怖ぢむ)
           -おぢる(怖ぢる)
           -おづる(怖づる)
           -おどく(脅どく)-おどかす-おどかさる-おどかされる
           -おどす(脅どす)-おどさる-おどされる
    -おぶ(怖ぶ)-おびゆ(怯びゆ)-おびやく-おびやかす-おびやかさる-おびやかされる
                    -おびやす
                    -おびyeる
           -おびる(怯びる)
    -おむ(怖む)-おむる(怯むる)「おめずおくせず」《おめおめ》
           -おめる(怯める)
    -おる(怖る)-おらぶ(哭らぶ)

 『恐怖の「お」』語群である。
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お( )-おく(起く)-おきる(起きる)
           -おこす(起こす)-おこさる-おこされる(熾す)
           -おこる(起こる)-おこらす-おこらせる(熾る)
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お( )-おぐ(驕ぐ)-おごる(驕ごる)
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     おそ(遅そ)-おそぬ(遅そぬ)-おそなふ-おそなはる「おそし(遅シ)」
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     おだ(穏だ)-おだふ(穏だふ)「おだし(穏シ)、おだひ/おだひし(穏ひシ)、おだやか穏」
           -おだむ(穏だむ)
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お( )-おふ(負ふ)-おはす(負はす)-おはせる-おはせらる-おはせられる「せおふ背負」
           -おはる(負はる)-おはれる「おはれかかる負掛」
           -おふす(負ふす)
           -おほす(負ほす)(負す、課す)「ておほす手負、おほせこと仰言」
    -おぶ(帯ぶ)-おばす(帯ばす)「おび帯」
           -おびす(帯びす)-おびさす-おびさせる
           -おびる(帯びる)
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お( )-おゆ(老ゆ)-おyiる(老yiる)
           -およす(老よす)-およすぐ
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お( )-おる(愚る)-おろく(愚ろく)「おろか愚」
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