2018年8月27日月曜日

動詞図(7)ま行動詞

--------------------<ままま>
ま(婚)-まく(婚く)-まかる(婚かる)-まかれる「めまく婚*女覓」
    -まぐ(婚ぐ)-まぐふ(婚ぐふ)-まぐはふ
                    -まぐはる
み(身*実)
む(身)-むす(生す)
め( )-めづ(愛づ)-めでる(愛でる)〔女づ〕「めだし愛シ」
「め女*妻(めこ/めのこ女子)、めぐし、めす雌、女神、雌鳥、女奴」
も(母*妹)「も妹(イ接:いも)、も母(いろも)」

ウ接:うむ(生む)-うます(生ます)-うまさす-うまさせる
                  -うまさる-うまされる
                  -うませる-うませらる
         -うまふ(生まふ)-うまはす「うまはし(利)」
                  -うまはる
         -うまる(生まる)-うまれる
         -うむす(生むす)
         -うもす(生もす)

 雌性を言う語はマ行に集まっている。
--------------------
ま(丸)-まく(巻く)-まかす(巻かす)-まかせる-まかせらる(負かす)
           -まかる(巻かる)-まかれる
           -まくす(巻くす)「まくしかく捲掛」
           -まくる(捲くる)-まくれる(「めくる」はこれの異形か)
           -まける(巻ける)
    -まぐ(曲ぐ)-まがる(曲がる)
           -まげる(曲げる)-まげらる-まげられる「まげ髷*枉*曲」
    -まず(混ず)-まざる(混ざる)
           -まじふ(混じふ)-まじはる「あひまじふ相、ぬきまじふ貫、をりまじふ折」
                    -まじへる
           -まじる(混じる)-まじらふ「いりまじる入混」
                    -まじろふ
           -まぜる(混ぜる)-まぜらる-まぜられる
    -まつ(纏つ)-まつふ(纏つふ)-まつはす(体に巻きつける)
                    -まつはる
           -まつぶ(纏つぶ)-まつばる「かきまつぶ掻纏」
                    -まつべる
           -まつむ(纏つむ)
           -まとふ(纏とふ)-まとはす
                    -まとはる
           -まとぶ(纏とぶ)
           -まとむ(纏とむ)-まとまる
                    -まとめる-まとめらる-まとめられる
    -まふ(舞ふ)-まはく(舞はく)-まはかす「ふるまふ振舞」
           -まはす(舞はす)-まはさす-まはさせる
                    -まはさる-まはされる
           -まはふ(舞はふ)
           -まはる(廻はる)
    -まる(丸る)-まるむ(丸るむ)-まるまる「まり毬」「まるし丸シ」
                    -まるめる-まるめらる-まるめられる
           -まろく(丸ろく)-まろかす
                    -まろかる
           -まろぐ(丸ろぐ)-まろがす
           -まろぶ(丸ろぶ)-まろばす「こyiまろぶ、ふしまろぶ」(転ぶ)
           -まろむ(丸ろむ)
み(廻)-みる(廻る)「いそみ磯廻、うらみ浦廻、くにみ国廻」
び(廻)「いそび磯廻、wuねび畝傍、をかび岡廻」
む(群)-むる(群る)-むれる(群れる)「むら村、むれ群」
め(巡)-めぐ(巡ぐ)-めぐる(巡ぐる)-めぐらす-めぐらせる
                    -めぐらふ
も(廻)-もづ(  )-もどく(擬どく)
           -もどす(戻どす)
           -もどる(戻どる)

シ接:しまく(繞く)
タ接:たみ(た+み/び廻)「たび旅」
タ接:たむ(た+む廻)「かきたむ掻廻、こぎたむ漕廻」、イ接:いたむ

 「丸い」ものを言うマ行縁語群である。「むれる(群れる)、むらがる」は”丸くなる”が原意か。また「むら村」はもと円形か。
--------------------
ま(目)-まく(目く)-まくふ(目くふ)-まくはふ
                    -まくはる
    -まぐ(覓ぐ)-まぎる(覓ぎる)-まぎらす-まぎらせる「くにまぎ国覓」
                    -まぎらふ
                    -まぎれる
           -まぐふ(覓ぐふ)-まぐはふ
                    -まぐはる
み(見)-みす(見す)-みさす(見さす)-みさせる
           -みせる(見せる)
    -みゆ(見ゆ)-みyeる(見yeる)
    -みる(見る)-みらる(見らる)-みられる
む( )-
め(目)-めぐ(愛ぐ)-めぐす(愛ぐす)〔情交〕
    -めす(目す)-めさる(目さす)-めされる「め目」「めす召、きこしめす、しろしめす」
    -めづ(愛づ)-めづる(愛づる)「めづらし珍シ」
           -めでる(愛でる)「めでたし目出度シ」
    -めむ(目む)-めみす(目みす)(めみす睇)
も(目)-もる(守る)-もらふ(守らふ)〔「もる守」は”目視する、注目する”意か〕

シ接:しめす示(し+めす見)〔試みに見せる〕
タ接:ためす試(た+めす見)〔試みに見る〕
マ接:まみゆ見(ま+みゆ見)-まみyeる
--------------------
ま(設)-まく(任く)-まかす(設かす)-まかさる-まかされる「まきく罷来」
                    -まかせる(罷かす/負かす)
           -まかづ(任かづ)
           -まかぬ(賄かぬ)-まかなふ〔時代別:あらかじめはかりまつ〕
           -まかる(罷かる)「まかりづ罷出、まかりまをす罷申;まかりぢ罷道」
           -まくる(罷くる)「さしまくる」
           -まける(負ける)
    -まwu(参wu)-まわふ(参わふ)-まわへる「まゐたる参至〔まゐいたる?〕」
           -まゐづ(詣ゐづ)
           -まゐる(参ゐる)-まゐらる
           -まwuく(設wuく)-まwuける「まwuけのきみ東宮」
           -まwuす(申wuす)-まwuさる-まwuされる「いのりまwuす祈申、ささげまwuす捧申」
           -まwuづ(参wuづ)-まwuでる
           -まをす(申をす)「まをしあぐ申上」
--------------------
ま( )-まく(播く、蒔く)〔(種を)周囲に”丸く”播く意か〕「まきおほす播生;しきまき敷播*重播」
--------------------
ま( )-まぐ(紛ぐ)-まがふ(紛がふ)-まがはす「まが曲/禍、まがこと悪事、まがたま勾玉、まがつひ」
           -まがゆ(紛がゆ)-まがよふ
           -まぎゆ(紛ぎゆ)
           -まぎる(紛ぎる)-まぎらす-まぎらせる
                    -まぎらふ-まぎらはす-まぎらはせる「まぎらはし(紛らはシ)」
                    -まぎれる
           -まぐる(紛ぐる)「まぐれあたり」
           -まごふ(紛ごふ)
--------------------
ま( )-ます(増す)-まさる(増さる)(優る、勝る)
    -まぬ(増ぬ)「まねし(多シ)」
    -まる(漏る)(大小便ともに”排泄する”)「おまる」「ゆまり/ゆばり、ゆばりまる」
み( )-みつ(満つ)-みたす(満たす)-みたさる-みたされる
           -みちる(満ちる)
           -みつる(満つる)
も(盛)-もる(盛る)-もらす(盛らす)「もし茂シ」
           -もらる(盛らる)-もられる
    -もる(漏る)-もらす(漏らす)-もらさる-もらされる
           -もらふ(漏らふ)-もらはる
           -もれる(漏れる)
--
も(重)-もふ(思ふ)「かたもひ片思」
    -もる(守る)-もらす(守らす)
           -もらふ(守らふ)-もらはる-もらはれる(守らふ/貰らふ-貰らはる-貰らはれる)

ア接:あぶ(余ぶ)-あばく(余ばく)(浴ぶ)
         -あびす(浴びす)-あびせる-あびせらる-あびせられる
         -あびる(浴びる)
         -あぶく(余ぶく)
         -あぶす(余ぶす)-あぶさふ
         -あぶる(余ぶる)-あぶれる
   あむ(余む)-あます(余ます)
         -あまぬ(余まぬ)-あまねふ-あまねはす〔広く行き渡る、行き渡らせる〕
                       -あまねはる
         -あまる(余まる)-あまらす-あまらせる「あまりべ/あまるべ余部」
         -あみす(浴みす)
         -あむす(浴むす)
オ接:おも(重も)-おもす(重もす)
         -おもぬ(思もぬ)-おもねる(阿る/佞る)
         -おもふ(思もふ)-おもはす-おもはせる-おもはせらる-おもはせられる
                  -おもはふ(m962/4389)
                  -おもはる-おもはれる
                  -おもふる
                  -おもほす
                  -おもほふ
                  -おもほゆ
                  -おもほる
   おぶ(溺ぶ)-おぼす(思ぼす)
         -おぼふ(溺ぼす)-おぼほす
                  -おぼほゆ
                  -おぼほる
         -おぼゆ(覚ぼゆ)-おぼyeる-おぼyeらる-おぼyeられる
         -おぼる(溺ぼる)-おぼらす-おぼらせる
                  -おぼれる
コ接:こぼ(零ぼ)-こぼす(零ぼす)-こぼさす-こぼさせる
                  -こぼさる-こぼされる
         -こぼつ(零ぼつ)
         -こぼる(零ぼる)-こぼれる
マ接:まぶ(塗ぶ)-まぶす(塗ぶす)
         -まぶる(塗ぶる)-まぶれる
   まむ(塗む)-まみる(塗みる)-まみらす
                  -まみれる「汗まみれ、糞まみれ、泥まみれ、血まみれ」
         -まむす(塗むす)
         -まむる(塗むる)
         -まめす(塗めす)
         -まめる(塗める)

 入れ物に注いだ水が「ます(増す)」ことを言う壮大なマ行渡り語、縁語群である。増した末に容器に一杯になり、遂に溢れ出ることも含む。「もふ/おもふ(思ふ)」は「おもきをおく、おもしとする」が本意のようである。
 日国「まる」の語源説欄に「満の義。また、モル(漏)の転か〔名語記〕」の卓見が見える。
--------------------
ま(間)-まつ(待つ)-またす(待たす)-またせる-またせらる-またせられる
           -またふ(待たふ)
           -またる(待たる)-またれる
--------------------<みみみ>
--------------------<むむむ>
む(身)-むく(向く)-むかす(向かす)-むかせる「うつむく、そむく背向/叛」
           -むかふ(向かふ)-むかはす-むかはせる
                    -むかへる-むかへらる-むかへられる(迎へる)
           -むくふ(報くふ)-むくはる-むくはれる「むくひ報*酬」
                    -むくひる
           -むくゆ(報くゆ)-むくyiる「むくyi 報*酬」
           -むける(向ける)

ソ接:そむく(背向)-そむかる-そむかれる
          -そむける
タ接:たむく(手向)-たむかふ「たむけ手向/たむけくさ草」
          -たむける
ハ接:はむく(歯向)-はむかふ
--------------------
む( )-むく(剥く)-むかる(剥かる)-むかれる
           -むくる(剥くる)-むくれる
           -むける(剥ける)(平ける)
    -むぐ(剥ぐ)-むぐる(剥ぐる)
    -むす(毟す)-むしる(毟しる)
め( )-めぐ(壊ぐ)-めげる(壊げる)
も( )-もぐ(捥ぐ)-もがる(捥がる)-もがれる
           -もげる(捥げる)
    -もる(捥る)

 「むしる毟」については、「むす」を想定し、ここに置いておく。
--------------------
む(蒸)-むす(蒸す)-むせぶ(咽せぶ)
           -むせる(咽せる)
    -むる(蒸る)-むらぐ(蒸らぐ)-むらがす
                    -むらがる
           -むらす(蒸らす)-むらせる
           -むれる(蒸れる、群れる)
も(燃)-もす(燃す)
    -もゆ(燃す)-もやす(燃やす)-もやさる-もやされる「ぼや小火」
           -もゆる(燃ゆる)
           -もyeる(燃yeる)
           -もよふ(燃よふ)

ア接:あぶ(焙ぶ)-あぶす(焙ぶす)
         -あぶる(焙ぶる)-あぶらる-あぶられる「あぶら油/脂」
イ接:いぶ(焙ぶ)-いびる(焙びる)-いびらる-いびられる
         -いぶす(燻ぶす)-いぶさる-いぶされる「いぶせし(鬱悒シ)」
                  -いぶせむ「いぶせみ悒憤」
         -いぶる(燻ぶる)-いぶらる-いぶられる
ク接:くぶ(燻ぶ)-くばす(燻ばす)
         -くばる(燻ばる)
         -くぶす(燻ぶす)
         -くべる(燻べる)-くべらる-くべられる
クス接:くすぶ(燻すぶ)-くすぶる
            -くすべる
            -くすぼる
    くすむ(燻すむ)
    ふすぶ(燻すぶ)-ふすぶる「ふすべ燻」(k-h相通形)
            -ふすべる
            -ふすぼる
ケ接:けぶ(煙ぶ)-けぶす(煙ぶす)-けぶさる-けぶされる
         -けぶる(煙ぶる)-けぶらす-けぶらせる
         -けむる(煙むる)-けむらす-けむらせる「けむり煙」
ス接:すぶ(煤ぶ)
ト接:とぶ(灯ぶ)-とぼす(灯ぼす)-とぼさる-とぼされる
         -とぼる(灯ぼる)
   とむ(灯む)-ともす(灯もす)-ともさる-ともされる(b-m相通形)
         -ともる(灯もる)

 「むす/むる」と「もす/もゆ」が意味の上で縁語と言えるかどうか分からないが、敢て分離する理由も見当たらないので、ここでは縁語として並べておく。土器の出現以前は「むす」ことを知らなかったわけで、もしそれ以前の語とすると別の意味があったであろう。
--------------------
む( )-むつ(睦つ)-むつぶ(睦つぶ)
           -むつむ(睦つむ)「むつまし/むつまじ」
--------------------
む( )-むつ(憤つ)-むつく(憤つく)-むつかる「むつかし難シ」
                    -むつくる
                    -むつける
           -むづく(憤づく)-むづかる
--------------------<めめめ>
--------------------<ももも>
     もだ(黙だ)-もだす(黙だす)〔黙っている〕
           -もだふ(悶だふ)-もだへる
           -もだゆ(悶だゆ)-もだyeる〔口に出さず悩む〕
--------------------
も(身)-もつ(持つ)-もたぐ(擡たぐ)-もたげる
           -もたす(持たす)-もたせる-もたせらる-もたせられる
           -もたる(凭たる)-もたらす-もたらせる(齎す)
                    -もたらふ
                    -もたれる
           -もてる(持てる)
    -もる(持る)-もらふ(貰らふ)-もらはる-もらはれる

タ接:たもつ(保もつ)-たもたす-たもたせる
           -たもたる-たもたれる
--------------------
     もと(本 )-もとむ(求とむ)-もとまる
                    -もとめる-もとめらる-もとめられる
           -もとる(悖とる)(日国:「もどる」とも。「もどる(戻)」と同語源)
     もど(擬 )-もどく(擬どく)「もどき擬/牴牾」「もどかし」
           -もどす(戻どす)-もどさす-もどさせる
                    -もどさる-もどされる
           -もどる(戻どる)-もどらす-もどらせる
                    -もどれる

 「もと(本*元*下*基)」の動詞化か。
--------------------
も( )-もむ(揉む)-もみつ(黄葉つ)-もみたふ「もみち/もみぢ黄葉*紅葉、もみちば黄葉」
--------------------
も( )-もゆ(萌ゆ)-もやふ(萌やふ)
           -もyeる(萌yeる)
           -もよふ(萌よふ)-もよほす「雨もよひ、(便意を)もよほす」
--------------------

0 件のコメント:

コメントを投稿