2018年7月20日金曜日

「ほ」-「おほし(多)」「おほきし(大)」

 いわゆる形容詞「おほし多」「おほきし大」は、共に一拍語「ほ」に接頭語「お」のついたオ接語であることを「増補版」で指摘した。そして「ほ」には「火、穂、帆、秀」などを当てている。「お(接頭語)+ほ(火、穂、帆、秀)」である。ところが「火、穂、帆」はどれも勢いよく高く立ちあがるもので、そこに共通性が感じられる。その共通性が「ひ、ほ(秀)」という抽象語であるであろう。これに従うと、「おほし」「おほきし」の本来の意味は、数量的なものではなく、「勢いがある、気高い、神々しい」あたりとしか考えられない。「おほし多」「おほきし大」とはやや距離がある。

 ところで、もうひとつ「多い」ことを言う古語に「あは」がある。「あはに/さはに」(「さはに」は&-s相通語)の形で用いられる。この「あは」が「おほ」と(&-h)縁語と考えることができるのである。つまり、「あ(接頭語)+は(多)」である。ということは、「多い、大きい」ということを原意とする渡り語「は、ほ」があって、「は」は接頭語「あ」をとって「あは」となり、「ほ」は接頭語「お」をとって「おほ」となった、と考えるほかない。これはこれで理屈にかなうが、今のところ渡り語「は、ほ」の存在を突きとめることができない。これではまったく説得力に欠ける。

 いずれとも決め難く、宿題とするほかない。

 ちなみに、上記の「ほ(秀)」は、「かほ(顔)」の「ほ」ではないかと考えられるのである。「か(接頭語)+ほ(秀)」である。また「ほほ(頬)」は「ほほ(秀々)」となる。こう見ると「かほ(顔)」を無理なく理解できるであろう。ひとつの解釈である。

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