「私家版和語辞典」において筆者は「かみ神」を(km)縁語のひとつとして論じた。しかし大事の神が二拍語であることには違和感もあり、どこか落ち着かない。それと言うのも「かみ神」を「か+み」と分解して、「み」を「おかみ(龗)/くらおかみ(暗龗)、やまつみ(山神)、わたつみ(海神)」などの「み(霊?)」とする見方があるからである。日国「わたつみ」の語源説欄には「ミはクシビ(霊異)のビに通ず〔大言海〕」という鋭い指摘もある。「かみ」の前項の「か」は不詳であるが、単なる接頭語としても差し支えない。
ところがこれには有力な否定論があって、日国「おかみ」の項の語誌欄にも『「おかみ」のミは甲類で、「やまつみ」「わたつみ」のミと同じであり、この「み」は、霊力あるもの、神霊の意か。「神」のミが乙類であるのとは異なる。』と明快である。上代特殊仮名遣いを重視する向きにはこれで決まりであろう。神は「か+み(霊)」ではない。だが、この現象の理解に決着がつくまでは結論は留保としたい。
和語には神性や霊性を言う一拍語にもうひとつ「ち」があり、日国には次の記述がある。『神や自然の霊の意で、神秘的な力を表わす。「みづち(水霊)」「のつち(野霊)」「いかづち(雷)」「をろち(大蛇)」「やふねくくぢのみこと(屋船久久遅命)」など。「わたつみ」「やまつみ」「ほほでみ」の「み」と同じ。』(例語は旧仮名に戻してある。)ここでは「ち」と「み」の意味を無造作に「同じ」としているが、「同じ」であるわけはないので、ここは何とか見分けたいところである。方法としてはそれぞれの渡り語を見つけることが第一歩であろうが、今のところ不明である。宿題である。
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